−発表資料−

 

「歯周病とメタボリックシンドロームとの関連性」研究実績により
日本人で初めて「米国歯周病学会賞」を受賞

公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(理事長・藤重 貞慶、以下LDH)の森田十誉子とよこ)研究員ら※1は、日本大学歯学部衛生学教室 前野正夫教授と共同で行った「歯周病とメタボリックシンドロームとの関連性」を示した研究※2により、このたび2011年American Academy of Periodontology(米国歯周病学会)のClinical Research Award(臨床研究賞)を受賞しました。本研究は、歯周病を予防することが、メタボリックシンドロームの予防につながることを独自の手法で解明したものです。今回の受賞は、日本人初の受賞であり、本研究内容の新規性、独創性および社会的重要性などが高く評価されたものと考えております。受賞式は、2011年11月14日、米国歯周病学会年次総会(米国マイアミ市、マイアミビーチコンベンションセンター)にて執り行われます。

※1 

(公財)ライオン歯科衛生研究所

  森田十誉子、山崎洋治、三田理絵、高田康二

 

ライオン(株)健康管理室

  瀬戸美才、西埜植規秀

 

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科

  佐々木好幸

 

日本大学歯学部衛生学教室

  本橋正史、前野正夫

※2 

対象論文: 

Journal of Periodontology. 81: 512-519. 2010

 

    タイトル: 

A cohort Study on the association between periodontal disease and the development of
metabolic syndrome(歯周病とメタボリックシンドローム発症との関連性に関するコホート研究)

LDHの概要と今回の受賞について

 ライオンは、「企業活動で得た利益を社会に還元する」という理念の基に、1913年からオーラルケアの普及・啓発活動を行ってまいりました。1964年に財団法人ライオン歯科衛生研究所が設立され、口腔保健の研究と普及を推進し、2010年10月からは公益財団法人として新たにスタートいたしました。LDHは、「すべての健康は口から始まる」という考えに基づき、乳幼児から高齢者まで、すべてのライフステージに対して予防意識を高め、良い習慣を提案し、その実践と定着に努めています。口腔保健活動では、それぞれのライフステージにおける口腔保健のテーマに応じた普及啓発を行い、調査研究活動では口腔保健活動、診療活動から得られた成果を専門家や生活者に情報発信しています。  今回の研究は、2002年から2006年にわたり、東京に本社がある企業の協力のもと、従業員を対象に、メタボリックシンドロームの指標となる肥満(BMI)・血圧・脂質・血糖値と、歯周病の判定基準となるCPIを調査し、統計学的解析を行いました。その結果、「歯周病」と「メタボリックシンドローム」には関連性があることを明らかにするとともに、歯周病の予防がメタボリックシンドローム発症の予防につながる可能性を見出しました(詳細は参考資料参照)

<米国歯周病学会・臨床研究賞について>

米国歯周病学会は、1914年に設立され、8,000人以上の歯周病の専門家が所属する世界的権威をもつ学会です。学会賞は、6つの部門によって構成されており、その中で「臨床研究賞」は、毎年その年に発表された歯周病関連の主な学術雑誌の中から、最も優秀と認められた研究論文に対して与えられる権威ある賞です。

(公財)ライオン歯科衛生研究所は、今後も"口腔から全身の健康を科学する研究"を続けてまいります。

以上

お問い合わせ窓口

ライオン株式会社 広報センター TEL:03-3621-6661


<参考資料> 研究結果概要

「歯周病とメタボリックシンドロームとの関連性」

調査は、24〜60歳の有職者の男性2028名、女性450名、計2,478名を対象とし、メタボリックシンドローム指標となる肥満*1・血圧*1・脂質*1・血糖値*1の各項目と、歯周病の判定基準となるCPI*2を測定し、相互の関連性を解析しました。

*1 

本研究でメタボリックシンドローム項目が陽性に該当する数値は、肥満;BMI(body mass index) 25以上、血圧;収縮期血圧130 mmHg以上/または拡張期血圧85 mmHg以上、脂質;トリグリセリド150 mg/dL以上/またはHDLコレステロール40 mg/dL未満、血糖値;空腹時血糖値110 mg/dL以上

*2 

CPI(community periodontal index)は、歯周疾患状態を示す指標。"歯周ポケットあり"とするのは、CPIの診査基準で、代表歯(10歯)において歯周ポケット4mm以上が1本以上

この結果、メタボリックシンドローム指標が陽性になっている人は、歯周ポケットありの人の割合が明らかに高いことがわかりました。(Morita T et al: J Public Health Dent. 69: 248-253, 2009)

「歯周病予防がメタボリックシンドローム発症の予防につながる」(受賞対象論文)

さらに、初回健診でメタボリックシンドローム指標が全て基準値内と診断された20〜56歳の有職者の男性727名、女性296名、計1,023名を対象とし、4年後の健診結果を追跡調査して、歯周病の有無とメタボリックシンドローム発症との関連性について解析しました。

4年後のメタボリックシンドローム指標の状況と初年度の歯周病の状況との関連性

初年度の歯周病の状況 4年後の状況(オッズ比
陽性数1 陽性数2以上 肥満 高血圧 脂質異常 高血糖
歯周ポケット なし
あり1.42.2*1.71.5*1.9*1.4

注:年齢、性別および生活習慣で調整  *印の項目は危険率5%未満で有意

★「オッズ比」について

オッズ比とは、「歯周ポケットなし」のグループにおける、各指標の陽性該当者の割合を1としたときに、「歯周ポケットあり」のグループの各指標の陽性該当者の割合が何倍になるかを示した値です。

その結果、以下の2点が確認できました。

・初年度に「歯周ポケットあり」とされたグループは、「歯周ポケットなし」のグループに比べて、4年後にメタボリックシンドローム指標が2項目以上、陽性になっている人の割合が有意に高い

・各メタボリックシンドローム指標の中では、「歯周ポケットあり」のグループは、4年後に「高血圧」と「脂質異常」に該当する割合が、「歯周ポケットなし」のグループに比較して有意に高い

これらのことから、歯周ポケットを持つ人は、現在は健康でも数年後にメタボリックシンドロームを発症するリスクが高いと考えられること、すなわち「歯周病予防」が「メタボリックシンドローム発症予防」につながる可能性があることが示唆されました。(Morita T et al: J Periodontol. 81: 512-519, 2010)

一覧に戻る