−発表資料−

 

〜布製品に付着したウイルスの不活化への応用に期待〜
ウイルスの不活化効果を発揮する技術を新たに開発

 ライオン株式会社(代表取締役社長・濱 逸夫)ファブリックケア研究所は、日本大学生産工学部環境安全工学科 神野英毅教授と共同で、布製品に付着したウイルスを不活化する技術の開発を進めてきました。この度は、衣類の“仕上げ処理”において効果を発揮する技術として、カチオン界面活性剤の塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(炭素鎖長10、以下、「DDAC」と略す)と特定のアミノカルボン酸系キレート剤とを併用することで、ノロウイルスの代替として試験で一般的に用いられるネコカリシウイルスに対して高い不活化効果を発揮することを見出しました。

 本研究に関する内容は、9月10日〜11日に開催される日本防菌防黴学会 第40回年次大会で報告予定です。

 なお、当社はすでに“洗濯時”に効果を発揮する技術として、漂白活性化剤のラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、「OBS-12」と略す)に高いウイルス不活化効果があることを見出し、2011年に学会で報告しています。

 当社は今後も、“洗濯”および“仕上げ処理”などの衣類ケア分野におけるウイルス不活化技術の開発を進めてまいります。

1.研究の背景

 近年、生活者の衛生意識が高まる中、新型インフルエンザやノロウイルス、風疹の流行によりウイルスに対する不安はさらに高まっています。その対策として、うがいや手洗いに加えて、タオルの共用をさけることが勧められており、布製品に付着したウイルスへの対策の重要性も注目されています。

 当社が行った調査では、約7割の女性が「衣料品・布製品に付着するウイルス対策を実施したい」と答えており、ウイルスの付着が気になる衣類・布製品としては、「洗面所やトイレで使う手拭タオル(68%)」「食卓やキッチンで使用するふきん(47%)」「トイレマット/キッチンマット(43%)」等が挙げられ、普段、自宅で洗濯している衣類や布製品に付着するウイルスに対して不安に感じていることが伺えました。また、衣類を介して家の中に持ち込みたくないものとしては、「花粉」「菌」に続いて「ウイルス」が挙げられ(図1)、毎回は洗うことができないアウター類に付着するウイルスに対しても不安に感じています(当社調べ)。

 そこで、当社ファブリックケア研究所は、衣類や布製品に付着するウイルスを“洗濯”、およびスプレーなどによる衣類の“仕上げ処理”において不活化する技術の開発を行ってまいりました。

 

図1      衣類を介して家の中に持ち込みたくないもの

図1 

衣類を介して家の中に持ち込みたくないもの

2.研究の概要

2-1) 

“洗濯時”に効果を発揮する技術として、漂白活性化剤OBS-12に高いウイルス不活化効果があり、さらに、汚れが共存する場合でもその効果は維持されることを確認

 

 当社はこれまでに、衣料用洗剤や漂白剤に使用されているOBS-12が洗濯液中で生成する有機過酸には、衣類の漂白効果に加え、殺菌※1、殺ダニ※2効果があることを見出しています。

 さらにOBS-12は、ノロウイルスの代替ウイルスとして試験で一般的に用いられるネコカリシウイルスにも高い不活化効果を示すことを確認しました(図2)。次に、タオルや衣類等に汚れがついた場合の洗濯を想定し、タンパク汚れの代替成分としてウマ血清を添加し、その効果を評価しました。OBS-12(38ppm)と同濃度の塩素濃度を示す次亜塩素酸ナトリウムと比較すると、次亜塩素酸ナトリウムの効果は汚れが存在すると大幅に減少するのに対し、OBS-12は高いウイルス不活化効果を維持することがわかりました(図3)。

 すなわち、OBS-12は、衣料用洗剤や漂白剤へ配合することで、汚れがついた衣類に付着するウイルスを“洗濯”によって不活化する効果が期待でき、すでに2011年日本防菌防黴学会※3にて報告しております。

  図2:漂白活性化剤OBS-12のネコカリシウイルス   図3:汚れ成分を共存させた場合の漂白活性化剤OBS-12と次亜塩素酸ナトリウムのネコカリシウイルス不活化効果
 

図2:

漂白活性化剤OBS-12のネコカリシウイルス不活化効果

 

図3:

汚れ成分を共存させた場合の漂白活性化剤OBS-12と次亜塩素酸ナトリウムのネコカリシウイルス不活化効果

 

※1

「漂白活性化剤アルキルアシルオキシ安息香酸およびアルキルアシルオキシベンゼンスルホン酸塩の殺菌効果」 戸部聖一、神野英毅ら 防菌防黴vol.35(5)(2007)

※2

「Effects of Bleach Activator, Sodium Alkyl Acyloxybenzene Sulfonate, on House Dust Mites (Dermatophagoides farinae)」S. Tobe, J. Oleo Sci. Vol.59(4)(2010)

※3

日本防菌防黴学会第38回年次大会 2011年8月30日(戸部聖一、神野英毅ら)

※4

TCID50法による。細胞がウイルスに感染すると形状が変化する現象を利用したウイルス量の測定法

2-2) 

衣類の“仕上げ処理”においてウイルス不活化効果を発揮する技術として、カチオン界面活性剤のDDACと特定のアミノカルボン酸系キレート剤とを併用することで高い不活化効果を発揮することを初めて確認

 

 この度は、スプレーなどによる衣類の“仕上げ処理”においてもウイルスを不活化するための技術開発に取り組みました。

 衣類用仕上げ剤に広く用いられているカチオン界面活性剤に着目し、様々な分子構造についてネコカリシウイルスに対する不活化効果を検討した結果、DDACが高い効果を示すことがわかりました。これは、DDACの親水性と疎水性のバランスがウイルス表面のタンパク質に作用しやすいためと推測しています。

 さらに、不活化効果を高めるため、ウイルス表面のカルシウムがカチオン界面活性剤の効果を阻害しているとの仮説を立て、カルシウム捕捉作用を有するキレート剤の添加による影響について評価しました。その結果、特定のアミノカルボン酸系キレート剤にカチオン界面活性剤の効果を向上させる機能があることをこの度初めて確認しました(図4)。

 以上、カチオン界面活性剤DDACと特定のアミノカルボン酸系キレート剤を組み合わせた“仕上げ処理”により、毎回は洗うことができないアウターや布製品などに付着したウイルスの不活化効果が期待できます。

  図4:DDACのネコカリシウイルス不活化効果における

図4:

DDACのネコカリシウイルス不活化効果における特定のアミノカルボン酸系キレート剤の増強効果

 当社は今後、本研究により得られた知見を応用し、衣類ケア分野におけるウイルス対策製品の開発を進めてまいります。

以 上

本研究に関する内容は、以下の学会で報告予定です。

【日本防菌防黴学会 第40回年次大会】発表概要

◎ 開催日

 

2013年9月10日、11日

◎ 会場

 

千里ライフサイエンスセンター

◎ 演題

 

ネコカリシウイルスに対するカチオン界面活性剤の不活化効果

◎ 発表者

 

戸部聖一1)、久我文成2)、宮原岳彦1)、小森谷友絵2)、神野英毅2)

1) ライオン株式会社ファブリックケア研究所

2) 日本大学生産工学部環境安全工学科

お問い合わせ窓口

報道関係の方 ライオン株式会社 コーポレートコミュニケーションセンター TEL:03-3621-6661

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