伝染病やアレルギーに関係する家屋内の害虫を防除して、害虫のいない快適な環境を提供する研究を行っている。害虫の防除には、害虫の生息する空間や害虫に殺虫成分を噴霧して殺虫する方法、害虫の通り道に殺虫成分を塗布し薬剤と接触することで殺虫する方法、餌に薬剤を混ぜて害虫が摂食することで殺虫する方法、害虫の嫌う薬剤によって忌避する方法等がある。使いやすく、安全で高い効果を発揮する殺虫剤を開発するために、ゴキブリ・ハエ・蚊等の害虫を飼育し、害虫の生態や行動を観察・把握するとともに、家庭/飲食店、戸建住宅/マンション、リビングルーム/寝室など、生活者の使用環境・場面を研究し、お客様のニーズに適した殺虫剤の開発を行っている。例えば、ゴキブリ類は壁や床の割れ目や隙間に、ダニ類ではカーペットの内部等に潜んで生息しており、これらの害虫を駆除するため、殺虫成分を含む微粒子を煙や液滴として拡散させ、部屋を所定時間密閉することで、有効成分を部屋の隅々にまで拡散させ、隙間に潜む害虫にも殺虫成分を到達させて駆除するくん煙剤や全量噴射エアゾール剤を開発し、広く提供している。
なお、殺虫剤は薬事法上、ゴキブリ・ハエ・蚊・ダニ等の衛生害虫の駆除又は防止を目的とする医薬品と医薬部外品があり、また、ムカデやアリ等の不快害虫の防除を目的とする雑貨品がある。
くん煙剤(図1)は「バルサン」殺虫剤の主力商品であり、基幹技術として燃焼技術の開発に注力している。殺虫成分を効率良く煙とともに空気中に拡散するには、燃焼基剤による熱発生に加えて、ガス発生を利用しており、殺虫成分の物性や家庭使用に適した燃焼及びガス発生組成物の探索研究を行っている。くん煙基剤は熱発生において殺虫成分を分解せずに気化・分散させる燃焼制御が必要であり、また家庭で安全に使用するための熱的挙動解析や燃焼生成物の分析を行っている。また、くん煙剤の煙粒子が殺虫剤を吸着し、部屋の隅々にまで拡散する挙動を光学的手法及び化学的手法を用いて解析し、これらの種々の検討結果に基づき安全で薬剤の効き目に優れたバルサンくん煙剤の処方設計を確立している。
屋内に生息するダニ(図2)は、糞や死骸がアレルゲンとなることが指摘されており、ダニの生理・生態・行動特性を把握しつつ、様々な角度からダニ防除のアプローチ研究を行っている。例えば、殺ダニ活性の高い有効成分を用いたダニ防除剤の開発、糞や死骸などのアレルゲン対策剤の開発、および殺虫剤を使わず脱酸素剤によってダニを窒息死させる駆除法の開発を行い、新たな知見を学会で発表している。ダニはカーペットやソファー、寝具等様々な場所に生息しており、その対策は一筋縄では行かず、総合的なダニ対策が必要である。それぞれの使用場面や生活スタイルに合わせた製品開発研究を多面的に取り組んでいる。
・火薬学会&The 3th International Symposium on Energetic Materials and their Applications 2008
・日本ダニ学会誌(14巻2号,2005)「 3種屋内塵性ダニ成虫に対する2タイプの脱酸素剤の致死効果」
・日本ダニ学会誌(16巻2号,2007)「屋内塵性ダニの卵に対する脱酸素剤の致死効果」
・日本衛生動物学会第62回大会(2010)講演「光センサーを用いたチカイエカの吸血・吸蜜・産卵行動の日周リズムに関する実験的研究」