会長インタビュー(アニュアルレポート2011)

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代表取締役会長兼CEO 藤重 貞慶の写真

新経営ビジョン「Vision2020」の達成に向かって前進し、「くらしとこころの価値創造企業」を目指します。

厳しい市場環境の2011年度でしたが、3期連続で史上最高の営業利益を更新しました。この1年を振り返って、いかがでしたか。

あらためまして東日本大震災により被災された皆様に心からのお悔みとお見舞いを申し上げます。

2011年度の日本経済・産業は、国内では震災の影響や急速な円高進行などにより厳しい状況に見舞われるとともに、海外ではタイの洪水や欧州債務危機などが影を落とし、不透明感な中で推移しました。

当社は期初には堅調な業績をあげていたものの、震災直後は原材料不足や製品流通の停滞により一部主力製品の販売に影響が生じました。具体的には、売上機会の減少が約80億円となったほか、棚卸資産や設備への被害などにより約30億円の特別損失を計上しています。一方、著しい円高に伴い、売上高で約30億円の為替換算影響によるマイナスが生じました。

売上高

営業利益

当期純利益

当社は「新・快適生活産業No.1」「環境対応先進企業」「企業文化の活性化」を目指し、「3つの革新」(マーケティング、営業、コーポレートコミュニケーション)を進めました。その結果、売上は前年並みとなりましたが、3期連続で最高の営業利益を更新することができました。 好業績を牽引したのは、主要ブランドの高付加価値商品です。2010年からはじめたブランドマネジャー体制も奏功し、国内一般用消費財の売上高の約60%を8つの"100億円ブランド"が占めました。また、新製品開発でも「明確なターゲット」「技術的なイノベーション」「明確な使用実感」を条件とし、より高い価値を追求しています。成果の一つとして、9月に改良新発売した「トップNANOX」は、超コンパクト液体洗剤市場で単品でシェアNo.1を獲得しています(当社調べ)

震災の経験を教訓に、原材料調達先の分散化や製品の生産・供給体制の強化など、多様な角度からリスクヘッジに力を注いでいます。

海外事業は、アジアの8つの国・地域で洗濯用洗剤、オーラルケア製品を中心に展開しています。2011年度の売上高は為替の影響を除く実質では、前年比107%と順調な伸びを維持しました。激しい価格競争のなか、当社はボリュームゾーン向けの製品と高付加価値製品を品揃えし、アジア市場のニーズに応えています。なかでも洗濯用洗剤は、進出している国・地域の加重平均でシェア第2位を確保し、マレーシアではトップシェアを占めています(当社調べ)。また、さらなる需要拡大に対応するため、タイ、マレーシア、中国の生産能力をそれぞれ2~3倍へと増強する予定です。さらに、新たにフィリピンで合弁会社を設立したほか、当社グループの一方社油脂工業(工業用機能化学品)がインドネシアに、出光ライオンコンポジット(特殊複合合成樹脂)がインドに子会社を設立しました。

藤重 貞慶の写真

2011年に創業120周年を迎えました。この歴史と実績の源泉はどこにあると考えていますか。

創業120周年を迎えられたのは、ひとえにステークホルダーの皆様の支えがあったからです。おかげで当社は創業以来成長を続けているわけですが、そこには3つのキーポイントがあると考えています。

一つ目は、人間の根源的なニーズに根ざした「安定した事業領域」です。まず生活必需品である日用品の分野で幅を広げ、今日ではOTC医薬品や機能性食品も扱っています。これらが、当社に「長い命」をもたらしています。

二つ目は、日本初、世界初といった「革新」の継続です。製品開発のみならず、製品情報の発信でもいち早く広告に着目し革新的な手段を駆使し、皆様に生活提案を行ってきました。また、明治時代から1日8時間労働を開始するなど、「従業員は協同者」という創業当時からの考え方をベースに、人材の活性化でも革新的な企業文化を築いてきました。このことは、当社に「新鮮な命」を与えています。

三つ目は、お互いの利益が増すプラスサム社会の実現、すなわち取引先や社会との「共存共栄」を大切にしてきたことです。これは、当社の「強い命」につながっています。

新しく定めたコーポレートメッセージには、どんな思いが込められているのでしょう。

企業ステートメントと企業スローガンからなるコーポレートメッセージを新たに策定し、2012年1月1日から使用しています。また、企業スローガンは、「今日を愛する。」としました。

どちらも根底にあるのは、「一日一日を、前向きに、充実して生きることこそ、幸せの本質」という価値観です。
人間は生まれてきたからには「自分も社会の役に立ちたい」と願うとともに、それぞれの夢を抱いています。そして、誰にとっても夢の実現のためには、心身をより健やかに保ち、めぐりくる日々をていねいに生きることが大事だと思うのです。むしろ、それが唯一の道といってもいいでしょう。これらをサポートするのがライオンの役割と考えます。

そこで企業スローガンには「"今日"という一日一日のくらしを、ていねいに、大切に生きる」という意味を込め、「今日を愛する。」としました。120年間、人々のくらしを見つめてきた当社が、今日を愛する一人ひとりをサポートしたいという決意をも込めた言葉です。

新しく打ち出した新経営ビジョン「Vision2020」について聞かせてください。

「Vision2020」を描くにあたっては、3つの社会的なパラダイム変化が背景となりました。まず、「健康・快適な生き方の希求」です。人々は単に長い人生でなく、健康寿命*の延伸を願い、心身の快適・充実といった質的な充足を求めるようになりました。
次に、「サステナビリティの実現」です。循環型社会、低炭素社会、自然との共生社会の実現に向けた企業の役割が、一段と重くなってまいりました。

最後は、「プラスサム社会への転換」です。先に述べたとおり、当社は創業以来、プラスサム社会の構築に努めてきましたが、その志向は世の中全体に広がりつつあります。企業には、限られたパイを奪い合うゼロサム(合計がゼロになる)の競争でなく、パイ自体を大きくしてみなでシェアするプラスサム社会の実現が求められています。これらは技術革新によって達成させます。社会的な課題の解消や新しい価値の創出、ひいては自社の価値を向上させる努力が求められています。

Vision 2020

こうしたパラダイム変化をふまえ「Vision2020」では、「くらしとこころの価値創造企業を目指す」「環境対応先進企業を目指す」「挑戦・創造・学習企業を目指す」という3つの経営ビジョンを掲げました。すなわち、2020年の当社は「めぐり来るすべての一日の人の清潔、人の健康、人の快適、そして人の環境を守り続け、価値ある未来をつくる、くらしとこころの価値創造企業」でありたい、と考えています。例えば、当社製品が貢献する歯の健康は、食べ、話すことにとって非常に大切です。人はしっかりと食べられ、話すことができれば、身体的な健康はもちろん、精神的な健康も増進することができます。年齢にかかわらず社会に貢献する意欲にあふれ、充実した気持ちでいられます。そんな「こころの価値」を、私たちは提供したいのです。

*日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のこと。WHO(世界保健機構)が2000年に公表した。平均寿命から介護(自立した生活ができない)期間を引いた年数が健康寿命になる。

経営ビジョン実現への道筋を聞かせてください。

4つの戦略を推進することによって実現を図ります。

1)国内事業の質的成長

少子高齢化社会を迎え、人々の価値観は、物質的な繁栄や利便から精神的な充実へ、くらしや健康に対する考え方も、単なる疾病治療や長寿命化から、心身の快適・充実といった質的な充足へ変化していくと考えられます。

2)海外事業の量的成長

今後も人口増加、経済成長、衛生意識の高まりで市場拡大が見込まれるアジアで既進出国でのシェア拡大と、新たな国への進出を目指します。具体的には、オーラルケア製品と洗濯用洗剤で進出市場シェアNo.1を目指します。

3)新しいビジネス価値の開発

従来から卸店・小売店を通じた製品販売を増やす一方、ダイレクト化とソフト化にも注力します。2007年に開始した「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」などの機能性食品の通信販売は、2011年度までに定期購入のお客様が10万人を超え、売上60億円規模へと成長しました。今後は、通販事業をさらに拡大するとともに、お客様一人ひとりのニーズや問題に対し最適解を提案するソフトビジネスの価値創出にも、より積極的に取り組みます。

4)組織学習能力の向上

組織の活性化と人材育成を進め、多様な人材が活躍し当社の強みに結びつくことを目指します。一方、製品提供の手法や広告宣伝のレスポンスなど、細かい業務プロセスでも革新を図り、組織としての学習能力を向上させます。

ビジョン到達の時間的イメージ

これら4つの戦略を推進していくうえで大切なのが、3つのイノベーションです。第一は、「ライフイノベーション」。生命科学・生活科学の新しい発見によって、ライフステージやライフスタイルに応じた「価値ある明日につながる今日の生活」を提案します。
第二は、「グリーンイノベーション」。「Vision2020」の背景にあるパラダイム変化として挙げた、サステナビリティの実現をもたらす環境対応を進めます。

そして第三は、最も重視している「ナレッジイノベーション」です。果敢に挑戦し、経験しながら学べる企業風土づくりを一段と強化します。例えば、社員一人ひとりが失敗を恐れることなく、自分が温めてきたテーマにチャレンジできるよう、社内に研究ファンドや事業ファンドを立ち上げています。万一失敗してもコスト面のロスはファンドが担保し、保守的な殻を破って有意義な挑戦に踏み出せるよう促しています。

「Vision2020」における定量的な目標の説明と、投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

「Vision2020」では、2020年に連結売上高5,000億円、連結営業利益500億円、営業利益率10%の達成を目指します。厳しさを増す事業環境の中で、特に利益率10%の達成が重要だと考えます。また、売上構成としては、現在約16%の海外売上高比率(連結)を30%まで高めること、機能性食品など新規事業分野を連結売上高の10%に引き上げ、事業構造を大きく変革していきます。

株主還元につきましては、安定的で継続的な配当を行う方針としています。2011年度は、創業120周年の記念配当1円を加え、配当は年間11円とさせていただきました。

当社は人間の根源的なニーズ、すなわち健康寿命の延伸に根差した領域で、最先端のビジネスを展開する企業です。経済的な利益還元だけでなく、株主の方々をはじめ全ステークホルダーの皆様に対し、健康で快適なくらしという大きな利益をお届けしていくことも強調したいと思います。

Sadayoshi Fujishige

代表取締役会長兼CEO
藤重 貞慶