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「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」代表取締役 社長執行役員 濱 逸夫

1 2017年度を最終年度とする「V-2計画」は、非常に大きな成果を上げました。成功要因はどのような点にあるのでしょうか。

A 中期経営計画を推進する中で、グループ全体の体力(収益力)と筋力(組織力)の二点が強化され、成長のエンジンになっています。

収益力と継続成長に向けた経営基盤の強化

「V-2計画」の目標達成は、この3カ年だけで成し遂げられたわけではありません。2012年にスタートした「V-1計画」から、様々な改革を積み重ねてきたことが「V-2計画」の成果に現れています。この6年間で、我々は、ライオンの「体力」と「筋力」を強化する改革に一丸となって取り組んできました。まず、「体力」ですが、これは「企業としての収益力」を指します。ライオンは収益性を高める経営に舵を切り、市場の変化を捉えた商品の高付加価値化を推進、同時にブランドを絞り込んで育成資源を集中投下しました。その過程で、継続的にブランド、商品を育成できる体制が国内外で定着しました。今では、重点ブランドや高付加価値商品が安定価格で販売されています。これにより、販売促進費が効率化され、中長期的にブランド・商品力を高めるための宣伝費を確保できる好循環が続いています。

さらに、継続成長に向けた経営基盤強化にも取り組みました。モノづくりの原点であるR&Dの機能強化や主要製品の生産能力を増強するとともに、グループの化学品事業をライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社に集約し、当該分野でのナンバーワンを狙える体制を整えました。また、成長が期待される海外事業では、市場競争力を高めるためにマネジメント体制を強化するとともに、機能性食品事業や新たな事業創出のための“仕込み”ができたと認識しています。

営業組織改革がもたらした組織能力の向上

次に「筋力」の強化、つまり、「組織能力の向上」も「V-2計画」の達成を後押ししました。この期間中では営業組織改革が最も進んだと認識しています。具体的には、目の前の売上を追うことだけでなく、販売店の抱える課題を把握し、当社のブランド育成を通じて、販売店各社と新たな需要を創造するには何をすべきかをともに考え、独創的な提案をできる力を身に付けました。これが様々な具体的な成果につながったことから、多くの販売店の信頼を勝ち取り、その結果、従業員のモチベーションが高まり、ブランド育成と販売店とのパートナーシップ構築を両立できる営業組織に生まれ変わることができました。さらに、この営業組織改革はマーケティング部門や研究開発部門との新たな連携をも生み出し、商品の試作品段階から「顧客視点に立ったモノづくり」を推進できる体制にまで進化しました。

私は社長に就任して以来、毎年15カ所前後の事業所を回り、若手従業員や管理職と意見交換しています。そこでは業務プロセスの改善をはじめ、様々な提案が活発に出てくるようになり、従業員や組織の進化が肌で感じられるまでになりました。この6年間を総括すると、全従業員で挑戦した「体力」と「筋力」の強化が「V-2計画」の達成をもたらしたと認識しています。

「V-2計画」の数値目標
(単位:億円) ’14実績 ’17目標 ’17実績 増減率
(対2014年度)
売上高 3,673 4,000 4,104 +11.7%
営業利益 124 200 272 +119.3%
経常利益 140 220 291 +107.2%
親会社株主に帰属する
当期純利益
73 120 198 +169.1%
ROE 6.2% 10%以上 12.2% +6.0pt
BEP 93.3% 90%以下 87.8% -5.5pt

2 2018年2月、新経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を発表しました。その内容をお聞かせください。

A 「健康、快適、清潔・衛生を通じた新たな顧客体験価値の創造」によって、毎日の生活習慣を、もっとさりげなく、楽しく、前向きなものへ “リ・デザイン”し、一人ひとりの「心と身体のヘルスケア」を実現します。

新経営ビジョン策定の背景

我々を取り巻く環境は、デジタルトランスフォーメーションの進展等により、想像を超えるスピードで大きく変化しています。このような環境下では、「V-2」計画の延長線上のアクションを積み重ねても、継続的な成長は望めません。今後も、社会やお客様から必要とされ、持続的に企業価値を向上させるためには、進むべき道を明確にし、変革に向けた動きを加速させる必要があります。ライオンは創業以来、「人々の幸福と生活の向上に寄与する」ことを社是に掲げ、事業活動を積み重ねてきましたが、時代が大きく変化する中で、これからの生活者の幸福な生活のためにライオンがなすべきことは何かを再定義し、2030年までに実現したい姿を設定しました。それが「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」というビジョンです。

*デジタルトランスフォーメーション:「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。IoTやAIなどの高度化するデジタル技術を活用することによって、業界の既存ビジネスにはない新たな価値を創造すること。

キーワードは “リ・デザイン”

新経営ビジョンにある「次世代ヘルスケア」は、英語では「アドバンスド・デイリー・ヘルスケア」と表現します。毎日の生活習慣の中で、生活者の心と身体の健康に貢献すること、これが「デイリーヘルスケア」であり、ライオンが創業以来大切にしてきた提供価値領域です。今回、「アドバンスド(先進的)」を冠したのは、これまでのライオンの提供価値を、さらに拡張・進化させたいという強い意思表示です。口腔ケアを例に挙げると、これまでは「機能の高い歯磨・歯ブラシを使えば、ムシ歯や歯周病を予防することができます。」というように、商品の機能的な側面をアピールしてきましたが、これからは商品の機能的な側面だけではなく、生活者が商品と出会い、商品を使用する中で得られる共感や感動を演出するなど、新しい顧客体験価値につながるような提案を通して生活者の心も動かしていきます。

さらに、商品やサービスについても、既存の価値領域から価値の拡張・進化を目指します。具体的には、これまでの「お口をケアするだけのオーラルケア」から、「全身の健康につながるオーラルヘルスケア」へ、さらにIoT等の新しい技術やサービスと結合させた新たなソリューションを提供するビジネスにもチャレンジします。生活者の毎日の生活習慣を「もっとさりげなく、楽しく、前向きなものに“リ・デザイン”すること」。これを実現するために、ライオンの事業も、従業員もよりクリエイティブにならなくてはなりません。ライオンの事業活動、従業員の考え方、働き方も含めてリ・デザインしていきたいと思います。

3 新経営ビジョンの実現に向けた中期経営計画「LIVE計画」のポイントを説明してください。

A ①新価値創造による事業の拡張と進化、②グローカライゼーションによる海外事業の成長加速、③事業構造改革による経営基盤の強化、④変革に向けたダイナミズムの創出、という4つの戦略フレームを設けました。

4つの戦略フレーム

2018年から始まる中期経営計画を「LIVE計画(LION Value Evolution Plan)」(ライブ計画)と名付けました。国内事業は、既存の事業領域を如何に拡張できるか、進化できるかということが大きなポイントになります。海外事業では、「V-2計画」で未達成だったエリア拡大とともに、既存エリアではカテゴリー拡張もしっかり行っていきます。それでは、4つの戦略フレームに沿ってご説明します。

新価値創造による事業の拡張・進化

新たなテクノロジーやサービスとの新結合により、生活者一人ひとりの「心と身体のヘルスケア」を実現する事業価値を創出していきます。具体的な3つのキーワードを掲げました。

①Oral-to-Body Solution
オーラルケア既存分野の強化に加え、周辺分野へと領域を拡大させ、「ライフステージ別オーラルケア」の提案を充実させます。さらに、「唾液検査システム」「予防歯科支援サービス」などの新規事業も組み合わせることで口腔ケアから全身健康ケアにつながる「総合オーラルヘルスケア事業」への拡張・進化を目指します。
②Daily Self-Care Enhancement
従来のヘルスケア分野にとどまらず、ホームケア分野においても、生活の質の向上に向け「心と身体のヘルスケア」に貢献する事業へと進化させます。
③Infotech Health Support
新しいテクノロジー(IoTやAI等)を積極的に活用し、既存事業の付加価値化や新たなヘルスケアビジネスモデルの創出に取り組んでいきます。
(2)グローカライゼーションによる海外事業の成長加速

ライオンの戦略方向性をより明確にするために、敢えて「グローカライゼーション」という言葉を使いました。グローバルで共通化させるところと、現地適応させるところを融合することで、独自の競争優位性を創出し、事業規模やビジネスエリアを拡大していきます。

①リージョナルマネジメント強化によるグループ経営の進化を図ります。
これまでライオンは、各国別にきめ細かなマーケティングを実施することで生活者からのご支持をいただきました。これからは、市場に共通性のあるリージョナル(地域)単位で、各国間の有機的な融合や本社経営資源の積極活用を行うことで、グループシナジーを最大化させます。これにより海外事業の効率化や意思決定の迅速化を進めていきます。
②ECチャネルの活用、M&A等によりビジネスエリアの拡大を目指します。
「V-2計画」では実現できなかった新規ビジネスエリアの拡大にも積極的に取り組んでいきます。M&Aや業務提携によるビジネスエリア拡大に加えて、成長するECチャネルを1つの突破口としたビジネスエリアの拡大にも挑戦していきます。
(3)事業構造改革による経営基盤の強化

環境変化を先取りした経営インフラの整備、事業ポートフォリオの見直しなど、経営基盤の強化のため、4つの施策に取り組みます。

①事業成長を牽引する柔軟かつ効率的な生産インフラへの投資を強化します。
オーラルケアを中心に、需要変動に対する柔軟な対応と顕在化しつつある労働力不足に対応するため、生産インフラへの投資を増強し、生産基盤を強固なものにします。
②先進的でサステナブルなサプライチェーンの整備を進めます。
社会的な問題となっている「物流労働力不足に伴う物流クライシス」への対応と、環境対応のさらなる推進に向けて、先進的でサステナブルなSCMを構築します。
③グループ経営高度化に向けて、情報システム基盤を強化します。
グローバルでのグループ経営管理の強化、SCM高度化へのサポート、デジタルマーケティングの強化に向けて、情報システムへの投資を強化します。
④事業分野・グループ体制の見直しを進め、経営資源・事業活動の効率化を図ります。
「V-2」計画においても経営資源や事業ポートフォリオの見直しを進めてきましたが、今回の「LIVE計画」でも、経営の効率化を十分に意識した事業体制の構築を進めます。
(4)変革に向けたダイナミズムの創出

“多様でオープンな”人材・組織・文化で、グローバル競争に勝ち抜く企業力を醸成するため、ライオンの人材・組織・文化をダイナミックに変えていきます。具体的に、以下の3つの施策に取り組みます。

①多様な人材の活用により人のダイナミズムを創出します。
新たな価値創造を促す多様な視点や知見を獲得するために、グローバルな人材や女性の活用に加え、外部の有用な人材登用を積極的に進めていきます。
②オープンイノベーションにより挑戦・創造する組織のダイナミズムを創出します。
既存の組織では新しい発想が生まれにくいと考えています。研究開発部門に新たに「イノベーションラボ」を設置、スタートアップ企業と連携するなど、外部資源とのつながりを強化し、組織の活性化を図ります。
③ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みや健康経営の強化による経営のダイナミズムを創出します。
ESGに配慮した経営や、サステナブル社会とライオンの事業成長を同時に実現しうるCSV(Creating Shared Value)の推進に積極的に取り組みます。また、「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」として相応しい、ライオン流「健康経営モデル」の構築と実践に挑戦していきます。

4 中期経営計画における業績目標と財務戦略をお聞かせください。

A 3カ年で1,000億円の成長投資を行い、次世代ヘルスケアカンパニーへの事業成長を加速するとともに、利益水準の継続的な引き上げを実現することにより、株主還元の充実を図ってまいります。

成長に向けた投資の積極化

当社は2018年度より国際財務報告基準「IFRS」を任意適用することとしました。中期経営計画では、2020年の連結業績目標(IFRS基準)として売上高4,000億円、営業利益400億円、営業利益率10%、ROE12%水準を掲げました。この水準は、日本基準で売上高約4,700億円、営業利益率8.6%に相当します。現状のROEの水準は既にこの目標値を超えており、今後の国内・海外事業の成長率を考慮しても達成不可能な数値ではないと判断しています。

財務戦略の中では、成長投資と株主還元の2点が重要なポイントです。投資計画は、成長機会の獲得と経営基盤強化のため、3カ年で総額1,000億円規模の投資を予定しています。国内外の生産設備や研究開発基盤の強化、システム投資、あるいはM&Aなど案件は様々です。M&Aは、「次世代ヘルスケア」の実現に必要な外部資源の調達や、ビジネスエリア拡大がターゲットとなります。現時点ではすべてが並行に検討されており、今後、ライオンとしての優先順位、期待度に鑑みながら投資を実行していきます。

増配継続に向けて
1株当たり当期配当金

株主還元は、連結配当性向30%を目安に、継続的かつ安定的な配当の実施を基本に考えていますが、これからも成長投資とのバランスを取りながら充実させてまいります。2018年度は3期連続での増配を予定していますが、その後も増配を継続できるよう強靭な収益体質をつくっていきたいと考えています。

5 ライオンを牽引される濱社長はどのような経営哲学をお持ちでしょうか。また、経営リスクをどのように捉えていますか。

A いつの時代も存在感のある企業であるために、常に変化し続け、挑戦と創造によって新しい価値を継続的に生み出していきます。

常に変化し続ける企業へ

これまでの話と重なるかもしれませんが、経営者として大切にしていることは、①会社の進むべき方向を明確に示す、②全従業員が同じ想いを持って、連動できる組織体制をつくる、そして、③常に変化し続ける企業として持続的成長を実現する、の3点です。

トップダウンだけでなく、ライオンが進むべき方向性を全従業員が共有し、実現に向けて連動する。そして、全従業員がフレキシブルかつクリエイティブな発想を持ちながら目標を達成していく。そんな会社にしたいということが根本にあります。どんな時代でも、ライオンは社会や生活者にとって信頼される企業、面白いと思われるユニークな存在であり続けたい。そのためには、ライオンのDNAである「挑戦と創造のこころ」を大切に、常に新しい価値を生み続けることが必要ですし、ESGの観点から社会的な信用力を積み重ねていくことも欠かせません。

外部環境の変化はリスク要因にもなります。また、これまでのビジネスモデルが通用しない、破壊的なビジネス構造の変化も想定されます。しかし、変化を先取りし、自らの発想や行動、さらに、社会とのかかわり方などを能動的なものに変えていくことでリスクは最大のチャンスに変えることができます。結局はそこに尽きるのではないでしょうか。ライオンの成長は常に従業員とともにあります。全従業員が短中長期の視点で、自らその意識や行動を変え、継続的な事業成長を実現する新たなライオンウェイを創り上げていくことが重要だと思います。

6 最後に株主、投資家へのメッセージをお願いします。

A ライオンは、企業と従業員の変革を継続しながら、成長を加速するステージに立ちました。我々は、これからも常に成長する企業であり続けます。

スピード感を持って成長を加速

「V-1計画」が始動してからの6年間で、ライオンは間違いなく会社も従業員も大きく変わりました。これからは、新経営ビジョン、中期経営計画のもとで変革と成長を加速させる、そういうステージになってきたと思います。

これから経営環境は大きく変化していきますが、生活者の健康に対するニーズはますます高まることが予想されます。生活者の毎日の暮らしに身近な存在であるライオンの役割は、今後ますます大きくなるでしょう。そのような中で、我々が自らを変革し、生活者の毎日の暮らしに貢献したいというスピリッツを持ち続けている限り、持続的成長を実現できると確信しています。

ライオンの未来にぜひご期待ください。

2018年5月

代表取締役
社長執行役員
濱 逸夫