第7話 ハイトップ

洗っているときはパーッと泡立ち、すすぎに入るとスーッと泡が消える 泡の制御技術と使用調査が生んだ大ヒット商品

昭和36年、電気洗濯機の出荷台数は約200万台を突破、昭和37年には電気洗濯機の一般家庭への普及率は45%に達しました(日本石鹸洗剤工業会HPより)。また昭和38年には粉石けんと合成洗剤の生産量が逆転し、洗濯で使用するものは固形石けんから粉石けん、合成洗剤へと移りつつあった時代でした。

こうした状況の中、ライオンは昭和31年より衣料用合成洗剤「トップ」を発売していましたが、研究部門は「新しい特長」をもった洗剤の開発を急いでいました。当時の製品の最大の問題点は「すすいでも泡が消えにくい」ことでした。そこで「洗っているときにはよく泡立ち、すすぎに入ると泡が消えやすい」洗剤を求めて、検討を重ねていました。アメリカの文献をヒントに、界面活性剤と石けんの比率がすすぎ性に大きく影響していることに気付いた研究者は、実際に多くの洗濯機を使って実験を行いました。一日中洗濯機をまわし、ひたすら洗濯工程を見つめ、界面活性剤と石けんの最適な比率を探し出しました。そして昭和36年、ついに他社に先駆けて泡の制御技術を確立し、強い制泡性を持つ合成洗剤の開発に目処をつけました。

一方、この開発品は本当に生活者の支持を得られるか。研究所の提案を受けた製品企画担当者は、当時としては非常に大規模な使用調査を行い、これを検証しました。よく泡立つ従来品とすすぎ性の良い新開発の洗剤と、どちらが好きかを問いかけたのです。その結果約6割が泡立つ洗剤を支持。泡が出るほうが洗浄力がありそうだと考えやすく、豊富な泡を支持した方が多かったのです。「生活者に受け入れられない、発売は中止すべきだ」、「新製品を出す以上、まったく新しい訴求力が必要だ」と社内でも激しい議論が交わされました。外部の有識者に相談し「単なる割合ではなく、今後を予見させる4割の声に注目すべきだ」とのアドバイスを受け、最終的には発売に踏み切りました。

(図①)ハイトップ

(図①)ハイトップ

期待と不安の中で下されたこの決断は、予想以上の大成功を導きました。昭和37年4月に発売された初の制泡性合成洗剤『ハイトップ』(図①)は一気に売上を伸ばし、秋から年末にかけては過去最高の売上を記録。「すすぐときにスーッと泡が消える」洗剤の使いやすさに、粉石けんから合成洗剤への切り替えが進みました。『ハイトップ』はその後も大きく売上を伸ばし、ライオンを支える頼もしい製品に成長しました(図②)。この『ハイトップ』はその後廃番となりましたが、1988年に超コンパクト粉末洗剤の名称として復活しました。

 

 

(図②)工場からの出荷

(図②)工場からの出荷

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