−発表資料−

2004年7月15日

世界で初めて確認
殺菌成分IPMPが「歯周病バイオフィルム」の
内部にまで浸透して殺菌
バイオフィルム制御技術で、
次世代の歯周病予防製品を開発、商品化へ



 ライオン株式会社(社長、藤重 貞慶)オーラルケア研究所は、同研究所が独自に開発した技術である「歯周病バイオフィルムモデル」を活用し、殺菌成分IPMP(イソプロピルメチルフェノール)が、歯周病菌の巣である「バイオフィルム」の内部にまで浸透して原因菌を殺菌することを世界で初めて確認いたしました。当社はこれらの成果を応用して、効果の高い歯周病予防製品の早期開発および商品化を目指します。さらにこのバイオフィルムモデル開発技術を医療分野等で問題になっている他の「バイオフィルム感染症」研究に応用してまいります。
※バイオフィルム:フィルム状になった細菌の集合体
 これらに関連した研究内容について9月17日から開催される「第53回日本口腔衛生学会」および10月15日から開催される「第47回秋季日本歯周病学会」で当社オーラルケア研究所が発表を予定しております。


<研究の背景>
日本初「歯周病バイオフィルムモデル」の確立(2003年に学会発表済み)
 ここ数年、「レジオネラ感染症」の続発など「バイオフィルム」が原因と思われる細菌感染症の被害が数多く報告され、社会問題となっています。これは細菌が「バイオフィルム」を形成すると細菌単体時と比べて殺菌剤や抗生物質が作用しにくくなるためで、化学的除去が十分にできず、結果的に感染被害が拡大した例がほとんどです(参考資料)。
 歯周病も、歯と歯ぐきのせまいすき間に存在する歯周病菌の巣である「歯周病バイオフィルム」が主原因ですが、現在使用されている殺菌剤や抗生物質は個々の細菌には効果が高いものの、「歯周病バイオフィルム」に対しては十分に効果を発揮できないことが、臨床現場などでも問題視されています。
 そこで当社は、歯周病の根本的な解決につながる「歯周病バイオフィルム」に有効に作用する殺菌成分の開発を目指し、従来の単体の細菌を用いた実験方法に替わる「歯周病バイオフィルムモデル」を用いた実験方法の確立に2002年から着手しました。歯周病の原因と言われている菌を含む4種類の細菌(ポルフィロモナス ジンジバリス、フゾバクテリウム ヌクレアタム、ベイヨネラ パルビュラ、アクチノマイセス ビスコーサス)を選定し、口腔内の状態を人工的に作り出した環境で培養する方法を開発することにより、
2003年に日本で初めて「歯周病バイオフィルムモデル」作成に成功しました。
 このモデル中の細菌の構成比、微細構造、殺菌剤への抵抗性等について検討した結果、ヒトの口腔内に実際に存在する「歯周病バイオフィルム」と類似しており、これらの研究成果は既に2003年第46回秋季日本歯周病学会で報告しています。
 尚、この「歯周病バイオフィルムモデル」は当社固有の技術です。


<2004年秋に学会発表を予定している研究内容>
「歯周病バイオフィルムモデル」を用いて殺菌成分IPMPを開発
 殺菌剤や抗生物質などが「バイオフィルム」中の細菌に作用しにくい理由の一つに、「バイオフィルム」に薬剤が浸透しにくいことが考えられています。そこで当社は「バイオフィルム」に対する浸透性が高い物質の探索研究に着手しました。 
 まず、前述の「歯周病バイオフィルムモデル」を用いて約100種類の薬剤を評価した結果、従来殺菌剤として一般的に利用されている「カチオン性(プラスに荷電した)化合物」よりも「非イオン性(プラスやマイナスに荷電していない)化合物」が浸透性に優れる傾向があることを見出しました。次に「非イオン性化合物」について、化合物の性質と浸透性の関係を調べたところ、ある「適度な疎水性(水に溶けにくい性質)」を持つ「非イオン性化合物」が特異的に「歯周病バイオフィルム」に対する浸透性が高いことがわかりました。
 そこで、上記の条件を兼ね備え、しかも歯周病菌に対して殺菌効果を有する化合物を探索した結果、殺菌成分であるIPMP(イソプロピルメチルフェノール)を見出しました。実際に「歯周病バイオフィルムモデル」を用いてIPMPの殺菌効果を調べたところ、オーラルケア製品などに殺菌成分として従来広く用いられているCPC(塩化セチルピリジニウム)やトリクロサンと比較してIPMPは著しく高い殺菌効果を有することが確認できました(図1)。
 さらにIPMPを「歯周病バイオフィルムモデル」に作用させ、「バイオフィルム」内部の細菌の生死が色で区別できる特殊な蛍光色素で染色(生死染色法)してから共焦点レーザー顕微鏡で確認しました。その結果、CPCやトリクロサンではバイオフィルムの表面の細菌しか殺菌されていないのに対し、IPMPでは「バイオフィルム」内部の細菌も殺菌されていることが明らかになりました。すなわちIPMPは「歯周病バイオフィルム」内部にまで浸透し殺菌することによって「バイオフィルム」を制御できることが示唆されました。


<まとめと今後の展開>
 当社独自の「歯周病バイオフィルム」を用いた研究により、「バイオフィルム」への浸透性に優れる化合物の特性として「非イオン性」「適度な疎水性」の2点において関連性を発見しました。そしてこの特性を有する殺菌成分としてIPMPを見出し、「歯周病バイオフィルムモデル」内部の原因菌が殺菌されることを確認いたしました。
 今後は「歯周病バイオフィルム」に着目し、これに浸透して直接原因菌を殺菌することで優れた歯周病予防効果が認められるIPMPを応用し、歯周病予防製品を早期に開発、商品化してまいります。また、バイオフィルムモデル開発技術を歯科分野だけでなく医療分野等で問題になっている「バイオフィルム感染症」研究に幅広く応用してまいります。






(参考資料)
 <感染症と「バイオフィルム」>
 様々な分野で、従来の殺菌方法では対処できない細菌感染の問題が生じています。例えばここ数年続発している「レジオネラ感染症」、食品製造工程における食中毒菌や菌が作る毒素の製品への混入、院内感染の一つである「尿道カテーテル膀胱炎」などは、殺菌処理を行っているにもかかわらず病原性細菌が殺菌除去できていないことが原因です。
 これらの問題に携わっている研究者たちが着目しているのが「バイオフィルム」です。つまり細菌を「浮遊している単体の菌(浮遊性細菌)」ではなく、細菌同士の集合体である「バイオフィルム」としてとらえることが、これらの問題解決のポイントであるという共通認識です。「バイオフィルム」の内部では、通常同一環境では共存できないような多種類の細菌が共存できる環境が作られ、細菌への栄養供給や老廃物の排出を行う水路も存在していることなどが明かになるなど、現在様々な分野で「バイオフィルム」に関する研究が進められています。



以上

お問い合わせ窓口
広  報  部 03−3621−6661

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