−発表資料−

2005年6月13日

“女性ホルモン”の減少も「女性の薄毛」の引き金に!
〜“女性ホルモン”が減少すると発毛促進シグナル
「BMP
※1」の生成が抑制される〜



 ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)生物科学センターでは、毛髪科学分野において育毛に関する研究を進め、これまでに「男性型脱毛」の知見をご報告してきました。この度は、新たに「女性の薄毛」に関する研究を進め、「女性の薄毛」の一つの要因とされる“女性ホルモン”の減少に着目し、“女性ホルモン”の毛髪細胞に対する作用を遺伝子レベルで検討いたしました。
その結果、“女性ホルモン”が減少すると発毛促進シグナル「BMP」の遺伝子発現が低下することと、そのメカニズムを世界で初めて解明したのでご報告いたします。
 なお、この研究成果は『日本基礎老化学会 第28回大会(2005年6月15〜17日 於:東京国際フォーラム 東京都千代田区丸の内3−5−1)』で発表する予定です。



1.研究の背景
 近年、女性の薄毛人口は300万人とも600万人とも言われており、男性と同様に女性においても薄毛で悩んでいる人が増加しております。当社が20〜60歳代女性に髪の老化について聞いたところ、「白髪が増えること」「髪にハリ・コシがなくなること」「髪が薄くなること」などがあげられました。また、現在「髪のハリ・コシ」や「髪の薄さ」について気にしているかどうかを聞いたところ、30歳代後半以上になると気にしている人が 多いことがわかりました(2005年調査)。
 一般に「女性の薄毛」は、男性とは異なる脱毛パターンを示すことがわかっています。すなわち、男性は 前頭部や頭頂部から脱毛する傾向であるのに対し、女性は加齢にともない頭部全体が薄くなる傾向が高いことがわかっています。また、当社は10〜60歳代女性の髪質の変化を調べたところ、加齢にともない髪の太さや 硬さが変化しており、45歳以降で太さや硬さが減少し始めることを確認いたしました。そして、この結果は、 “女性ホルモン”の分泌が30歳代から減少し始め、40歳代で急激に減少することと相関していました。 従って、40〜60歳代の女性が薄毛になるのは、“女性ホルモン”の減少によりホルモンバランスが崩れることが薄毛の要因の一つである可能性が示唆されました。
 従来、育毛の研究は男性ホルモンの作用を中心に研究されてきましたが、当社は女性特有の髪の変化が要因となる「女性の薄毛」について研究するため、“女性ホルモン”と「女性の薄毛」の関係について着目し検討を 進めました。
 なお、当社はこれまでに徳島大学医学部皮膚科学教室(荒瀬誠治 教授)との共同研究により、男性型脱毛部位では、発毛促進シグナル「BMP」と「エフリン※2」の遺伝子発現が特異的に低下していることや「エフリン」が毛根の数を増やすこと、「BMP」が毛髪のケラチン生合成を高めていることを世界で初めて確認しております。

※1 「BMP(Bone Morphogenetic Protein;骨形成因子)」:発毛促進シグナルとして働くタンパク質。
※2 「エフリン(Ephrin;形態形成因子の1種)」:発毛促進シグナルとして働くタンパク質。


2.研究の概要
(1) “女性ホルモン”の減少が発毛促進シグナル「BMP」の遺伝子発現を抑制することを世界で初めて確認
 “女性ホルモン”と「女性の薄毛」の関係を調べるにあたり、女性の毛髪の毛乳頭細胞を用いた培養系に女性ホルモンを添加していないものと添加したもので、「BMP」の遺伝子発現量を比較いたしました。
 その結果、女性ホルモンを添加していないものは、時間が経過するごとに「BMP」の遺伝子発現量が減少するのに対し、添加したものは「BMP」の遺伝子発現量の減少を抑えることが確認されました。
さらに、女性ホルモンが毛乳頭細胞内で「BMP」の遺伝子発現を高めることも確認いたしました。
これらのことから、“女性ホルモン”が減少すると、発毛促進に重要な「BMP」の生成が抑制されてしまうことが示唆されました。
(2) “女性ホルモン”は発毛に働く「ベータ型女性ホルモン受容体(ER−β)」を介して「BMP」を増やす
 一般にホルモンは、ホルモン受容体を介して作用します。「女性ホルモン受容体(ER:Estrogen receptor)」には「アルファ型女性ホルモン受容体(以下ER−α)」「ベータ型女性ホルモン受容体(以下ER−β)」の2種類が存在していることがわかっています。いずれの機能もまだ明確になっておりませんが、近年「ER−α」は、毛の休止期から成長期への移行を阻害し毛成長を阻害することがわかっています。
 そこで、女性の毛髪における女性ホルモンとそのホルモン受容体の関係を調べるため、女性の毛髪の毛乳頭細胞を用いた培養系に女性ホルモンを添加し、「ER−α」「ER−β」の発現量を調べたところ、女性ホルモンは毛乳頭細胞内の「ER−β」の発現量を高めていることが確認されました。
 さらに、「ER−β」が発毛作用に関与しているかどうかを遺伝子レベルで解明するため、発毛促進シグナル「BMP」の遺伝子に対する「ER−β」の作用を調べました。その結果、「ER−β」が、特異的に「BMP」の遺伝子に結合して「BMP」の遺伝子発現を高める作用があることがわかりました。すなわち、“女性ホルモン”は女性ホルモン受容体「ER−β」を介して発毛促進シグナル「BMP」を増やし、発毛を促進する可能性が示唆されました。

 以上、従来育毛の研究は男性ホルモンの作用を中心に研究されていましたが、当社は女性特有の「女性の薄毛」に関する研究を進め、“女性ホルモン”自身が発毛促進に関与していることを明らかにいたしました。
すなわち、
1) “女性ホルモン”が減少すると発毛促進シグナル「BMP」の生成が抑制されること
2) 女性ホルモン受容体「ER−β」が“女性ホルモン”を受けとり「BMP」を増やすこと
の2点を世界で初めて発見いたしました。


3.今後の研究
 女性は加齢とともに“女性ホルモン”の分泌量が減少し、薄毛になる傾向があることから、“女性ホルモン”自身の減少を防ぐことで、発毛促進シグナル「BMP」の発現を高め、薄毛を予防できると考えられます。
しかし、“女性ホルモン”の直接投与など、人為的にホルモンバランスを調整することは全身的な副作用を引き起こすなどの弊害を生じかねません。
 そこで今後は、本研究の知見を応用し、女性の「薄毛」や「髪質の変化」などの悩みに対して、“女性ホルモン”の減少が引き起こす「BMP」の減少を改善する成分の開発を進め、女性専用の優れた発毛促進剤の開発を目指し、鋭意研究を進めていく予定です。


【日本基礎老化学会 第28回大会】発表概要
・開催日 2005年6月15〜17日(口頭発表 17日)
・会 場 東京国際フォーラム
・演 題   毛乳頭細胞におけるエストロゲン受容体βを介したBMP-2の
調節
・発表者 ライオン株式会社 研究技術本部 生物科学センター
山田 裕子、翠川辰行、吉野 輝彦、大寺 基靖



以上

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<報道関係の方> 広  報  部 03−3621−6661
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