新規シミュレーション技術開発:輸送シミュレーション
新しい容器開発では、複数案のデザインを絞り込むために、多種多様な評価が必要であり、CAE(工学シミュレーション)技術を活用してボトル単体の機能・性能を予測する方法を開発しています。この技術を発展させ外装段ボール箱内でのバラケ現象を対象とした、新たなCAE解析シミュレーションの技術開発に取り組んでいます。
バラケ現象とは
販売店では、段ボールをトレー状にカットし、そのまま陳列販売するケースが増加しています。そのため店頭での見栄えやディスプレイ効果の観点から開梱後の商品の整列性を考慮した輸送包装が必要です。しかし、ボトルの形状や外装箱仕様によっては図1に示すバラケ現象が発生し、商品の整列性に問題が生じます。
こうした状態をデザイン選定時に予測出来れば、対応するためのコストを踏まえた上でのデザイン選定が可能となり、後工程でのトラブルを削減することにも繋がります。
MBD(マルチボディダイナミクス) 技術の活用
本課題を解決するためのシミュレーション技法として、MBD(Multi Body Dynamics )法を選定しました。MBD分野は現在非常に注目を集めているシミュレーション分野です。特に、3D-CAD から形状情報・リンク情報・荷重情報などが自動で渡せるようになり、操作法の簡便化が進展している。これを用いると単に部品単位での挙動解析ではなく、系全体の解析が精度良く実行できるからです。
MBDによるシミュレーションは3要素から構成されており、本検討での要件は各々表1のとおりです。
要素 | 解説 | 本検討での定義パラメータ |
---|---|---|
ボディ | 物体 | ボトル・段ボール・仕切り |
入力 | 方向・強さ | 振幅・振動数・振動波形 |
接触 | ボディ同士を接触させる為の要件 | 反発係数・動摩擦係数・静摩擦係数 |
この内、バラケ現象を発生させる主要素となる入力に関して、加振条件を明らかにするための検討を行いました。振幅・振動数・波形を表2に示す5条件で解析したところ、バラケ易い加振方向はケースや配列の対角方向であること分かりました。初期段階において輸送包装試験相当のシミュレーションが可能となり、デザイン選定段階から精度の高い容器設計が可能となりました。
Case1 | Case2 | Case3 | Case4 | Case5 | |
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加振方向 | 長手方向 | 短手方向 | 上下方向 | ケース対角方向 | 配列対角方向 |
振幅 | 30mm | 30mm | 4mm | 30mm | 20mm |
波形 | 正弦波 | ||||
振動数 | 3Hz | 3Hz | 10Hz | 3Hz | 5Hz |
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解析結果 | ![]() |
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結果概略 | 加振方向に一緒に傾く | ほとんど乱れない | 一部のボトルが自転する | ケース隅のボトルから加振方向に大きく傾く | ケース隅のボトルから加振方向に大きく傾く |
図2 バラケ現象のシミュレーション例