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とき放て!皮膚の力

人体最大の臓器ともいわれる皮膚。その力を十分に発揮させるために、ライオンは、身体の内外から皮膚をケアし、皮膚の健康を維持するための製品開発に取り組んでいます。

皮膚の「清潔」を見直す

 皮膚は、保護作用、体温調節作用などのさまざまな生理機能をもち、身体の恒常性維持に大きな役割を果たしています。この「皮膚の力」を発揮させるためには、皮膚を清潔に保つことが大切ですが、過度の洗浄は皮脂を必要以上に落としてしまうため、皮膚の乾燥やバリア機能の低下につながります。また、皮膚に存在する多様な常在菌のバランスを適切に保つことも、皮膚本来の力を発揮させるために重要です。こうした観点から、皮膚洗浄剤には、不要なものを洗い落とし、必要なものは残す「選択的な洗浄」が求められています。

 皮膚洗浄剤に使われる界面活性剤はおもに脂肪酸塩とポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(polyoxyethylene alkyl ether sulphate、以下AES)です(表1)が、ライオンは脂肪酸塩にこだわっています。それは、すすぐとキュッとしてさっぱりした洗いあがりになるからです。

表1 ボディソープ、ハンドソープによく用いられる界面活性剤

表1 ボディソープ、ハンドソープによく用いられる界面活性剤

 皮膚洗浄剤の洗浄成分として使われている脂肪酸塩は、汚れを落とすだけでなく、幅広い細菌に対して殺菌力を示します。図1からわかるように、AES(ここではC12AE2S)は大腸菌に対する殺菌力をほとんど示しませんが、脂肪酸塩であるC12K、C14Kは殺菌力を示します1)

図1 大腸菌に対する殺菌力1)

図1 大腸菌に対する殺菌力1)

大腸菌の菌液と界面活性剤溶液を混合し、0秒、10秒、20秒、30秒、60秒経過後、培地に塗布した。24時間培養後、コロニー数を計測し、次式により殺菌力を算出した。殺菌力=log(初発菌数/残存菌数)。

  また、脂肪酸塩はウイルスの不活化効果ももっています。図2に示すように、ネココロナウイルスを不活化する効果は、AESよりも脂肪酸塩系の界面活性剤のほうが高いことがわかります2) 。また、脂肪酸塩系の界面活性剤は、AESに比べてインフルエンザウイルスを不活化する効果が高いという報告もあります3, 4)

図2 ネココロナウイルスに対する不活化効果2)

図2 ネココロナウイルスに対する不活化効果2)

ウイルス液と界面活性剤溶液(40mM)を混合し、5分間反応させた。その液を培養細胞に接種して培養し、50%の細胞にウイルスが感染する濃度である感染価(Titer, TCID50)を測定した。

 一方で、脂肪酸塩をベースとした皮膚洗浄剤は、表皮ブドウ球菌に対する殺菌力を示さないことが確認されています(当社データ)。また、脂肪酸塩の一種であるパルミトレイン酸カルシウムは、黄色ブドウ球菌やアクネ桿菌を効率よく死滅させる一方で表皮ブドウ球菌への殺菌力は小さく、選択殺菌性を示すことも報告されています5)。大腸菌や黄色ブドウ球菌、ウイルスといった病原体には有効に働き、皮膚にとって重要な役割を果たしている皮膚常在菌の表皮ブドウ球菌は残す脂肪酸塩は、皮膚にとって必要なものと不要なものを選択して機能を発揮できる有用な界面活性剤なのかもしれません。

【文献】

1) 森部光俊ら, 日本防菌防黴学会第39回年次大会要旨集, p.232 (2012)

2) 森部光俊ら, 日本防菌防黴学会第41回年次大会要旨集, p.154 (2014)

3) 草場麻衣子ら, 日本防菌防黴学会第37回年次大会要旨集, p.115 (2010)

4) 川原貴佳ら, 日本防菌防黴学会第38回年次大会要旨集, p.132 (2011)

5) Yamamoto Y. et al., Journal of Oleo Science, 64, 283-288 (2015)

皮膚洗浄剤にプラスαの機能を

 ライオンは脂肪酸塩のよさを生かしつつ、保湿効果の高い皮膚洗浄剤を開発してきました。それは、保湿効果を重視されるお客様が多いことと、保湿が「皮膚の力」を発揮させるのに重要だからです。

これまでも保湿成分を配合した洗浄剤はありましたが、ほとんどの成分は洗い流されています。そこでライオンでは、使用時に水で希釈することで、保湿成分が親水性から疎水性に変化するような皮膚洗浄剤を新たに設計しました。水で洗浄剤が薄まることによって起こる「コアセルベーション」という現象を利用し、疎水性複合体をつくるようにしたのです。こうしてできる「保湿成分複合体」は皮膚にしっかりと吸着するので、洗い流されずに皮膚をベールのように覆い、保湿機能を発揮します。

 ライオンの技術開発により、うるおいという必要なものを選択的に残して洗浄を行える新しいタイプの洗浄剤が登場したのです。

皮膚の健康維持は新たなフェーズへ

 「皮膚本来の力」を引き出すためには、洗浄とは異なる視点からのアプローチも必要です。その1つとして身体の内からのケアに着目しています。

 ライオンでは睡眠の研究を行っており、清酒酵母を内服することにより睡眠の質が上がることを見いだしました。質の高い睡眠によって健康の維持・増進に重要な成長ホルモンの分泌が促され、頬のコラーゲン密度が増加することを確認(図3)、皮膚の弾力性の向上や肌質の改善を示唆する結果も得ています。

図3 清酒酵母を内服した際の頬コラーゲン密度の増加

図3 清酒酵母を内服した際の頬コラーゲン密度の増加

就寝前に清酒酵母含有タブレットを5週間摂取した群(10名)と清酒酵母を含有しないタブレット(プラセボ)を5週間摂取した群(9名)の頬をDermaScan®(Cortex Technology社製)を用いて超音波画像解析法で解析。

 このようなアプローチができるのは、日用品から機能性食品、OTC医薬品までを取り扱うライオンだからこそのこと。身体の外からだけでなく、内側からも、皮膚本来の正常な状態を保ち続けられるような製品を提供し、心身の健康実現に貢献していきます。

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