口腔保健啓発活動
当社は、「企業活動で得た利益を社会に還元する」という創業当時から一貫した理念のもとに、1913年から口腔保健の普及・啓発活動を行ってきました。近年では、口腔保健と健康寿命(心身ともに健康に生きていける寿命)は密接な関わりがあることが明らかになってきており、ライオングループは、生活者が生涯にわたり健康で快適にくらすことを目指し、口腔保健啓発活動を日本に加え海外事業所各地で実施しています。
財団を通じた口腔保健啓発活動
当社は、1964 年に財団法人として設立、2010 年に公益財団法人への移行認定を受けた(公財)ライオン歯科衛生研究所(LDH)の口腔保健啓発活動を、全面的に支援しています。LDHは、日本歯科医師会、大学、行政などと連携しながら下記の3つの公益事業を通じ、生活者の歯と口の健康を保持増進し、すべての人々の生活の質の向上に結びつけられるよう口腔保健の最前線で社会に貢献しています。
LDHの3つの公益事業
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口腔保健普及啓発事業
すべてのライフステージでの口腔保健の普及啓発活動 -
調査研究事業
健康寿命の延伸に向けた口腔保健の重要性に関わる調査研究ならびに各事業や活動を通じて得られた研究成果の専門家や生活者への情報発信 -
教育研修事業
保健指導者や歯科専門家に対する各種セミナーや講演会を開催
全国小学生歯みがき大会
1932年から続いている「全国小学生歯みがき大会」は、小学生を対象に、毎年「歯と口の健康週間」の時期(6月4日〜10日)に合わせて開催しています。2016年の第73回大会は、6月3日、「学童歯みがき大会」から「全国小学生歯みがき大会」に改称し、インターネット配信により日本全国ならびにアジア8つの国と地域の1,729校、約9万名の小学生が参加して開催されました。第73回大会は「歯と自分をみがこう!」をテーマに、健康な歯ぐきの大切さや、毎日の生活習慣である歯みがきの方法、デンタルフロスの体験を通して「継続する力」の大切さを学び、未来宣言シールを使って「将来の夢とそれに向かって毎日コツコツ続ける目標」を記入しました。
累計108万名(2016年12月時点)
「全国小学生歯みがき大会」に参加した小学校
「全国小学生歯みがき大会」の様子
「健口美」体操の普及
LDHでは、口腔機能の大切さの理解と機能低下への気づきを促すことを目的に、シニア生活者向けの「健口美」体操を開発し、普及活動を行っています。当社が開催しているウォークイベントや流通コラボイベントなどで「健口美」体操を参加者と行っています。2016年は全国で約5万名と行いました。
また、「第29回ねんりんピック」*においても、メインアリーナステージで「健口美」体操を行い、お口の機能とその保持増進の大切さについて啓発しました。
ねんりんピック
関西ウォークイベント
* 全国健康福祉祭(愛称:ねんりんピック)は、厚生労働省・開催都道府県(政令指定都市)主催の、スポーツや文化種目の交流大会を始め、健康や福祉に関する多彩なイベントを通じ、高齢者を中心とする国民の健康保持・増進、社会参加、生きがいの高揚をはかり、ふれあいと活力ある長寿社会の形成に寄与するためのイベント。
学術面での貢献
LDHは2011年に文部科学省研究振興局学術研究助成の指定研究機関として認定され、大学や公的機関と広く共同研究を推進することができるようになりました。2012年度には京都大学大学院医学研究科との3ヵ年にわたる共同研究を含む2件の研究テーマが科学研究費助成事業として採択され、2013年度には日本大学歯学部との3ヵ年にわたる共同研究テーマが採択されました。2016年度には、東京歯科大学との共同研究と東京健康長崎医療センターとの共同研究の2件の研究を開始しました。また、公益財団法人8020推進財団の助成事業や助成研究にも採択されるなど、これからも、学術面で社会に貢献できる研究を推進していきます。
国際セミナー「LDH シンポジウム」の開催
2016年6月26日に、虎ノ門ヒルズフォーラムにおいて、歯科医療従事者を対象に国際セミナー「LDH シンポジウム~健康寿命の延伸に向けた歯科医療の使命と可能性~」を開催しました。シンポジウムにはForsyth Dental Centerやタイ、インドネシアなど、海外の先生方も参加しました。
日本大学 特任教授をコーディネーターとして、米国歯周病学会 前会長、東北大学大学院 教授、大阪大学大学院 教授など専門家による講演の後、パネルディスカッションが行われ、国民の健康長寿社会の実現に向けた歯科医療の使命や役割について有意義な討論が行われました。これからも、学術面で社会に貢献できる研究を推進していきます。
国際セミナー「LDH シンポジウム」
東京都児童相談センターでの歯科健診・保健指導の取り組み
LDHでは、2009年から東京都児童相談センター内の一時保護所において、月に1回、歯科医師の先生方と協働で歯科健診および保健指導を行っています。この取り組みの目的は、歯科健診や保健指導を通して児童の生活支援や心のケアを行うことです。2016年までに約2,300名の子どもにたちに実施しました。
子どもの健康な生活習慣の定着に貢献するこの取り組みに対して、2016年6月30日に東京都児童相談センター所長から感謝状が授与されました。
感謝状
革新的イノベーション創出プログラムの取り組み
2014年に文部科学省の研究開発プログラムである革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)がスタートしました。COI STREAMは、10年後を見通した革新的な研究開発課題を特定した上で、既存分野・組織の壁を取り払い、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するためのプログラムです。全国18の拠点で、大学や企業の関係者が一体となり研究開発を強力に推進しています。
当社およびLDHは、拠点のひとつである国立大学法人 弘前大学と2016年より連携し、医科歯科連携への第一歩として、口腔保健の立場から研究事業と社会実装に取り組んでいます。具体的には、健康ビックデータ*解析による健康寿命の延伸と幸福度向上を目指して、疾患予防発見と予防法の開発に向け挑戦しています。今後も取り組みを進めます。
* 大容量のデジタルデータ
「第26回ライオン健康セミナー」開催
LDHでは、歯科衛生士などを対象に最新の歯科情報などに関する各種のセミナーを毎年開催しています。
2017年1月29日、「第26回ライオン健康セミナー」がライオンNew Year セミナーから改称して、よみうり大手町ホールで408名が参加し開催されました(大阪開催:2017年4月23日、大阪国際会議場、参加者240名)。
ライオン健康セミナーは、歯科専門家を対象に口腔の健康に関連する最新情報や歯科診療所で役立つ情報を発信する目的で1992年から東京で始まり、2015年の第24回からは大阪でも毎年開催しています。
近年、口腔の健康状態が全身の健康に及ぼす影響が次第に明らかになり、健康長寿や生活の質の向上を担う歯科医療の役割が重要性を増してきています。このような背景から、第26回のセミナーは「健康寿命の延伸に向けた歯科医療をめざして」をテーマに4名の先生をお招きし開催しました。
- 新開省二先生(東京都健康長寿医療センター研究所 副所長)
- これだ!健康長寿の食生活
- 長谷川嘉昭先生(長谷川歯科医院(東京都中央区) 院長)
- 歯周基本治療を再考する
- 藤本篤士先生(札幌西円山病院歯科 診療部長)
- 口から食べる幸せを守るための予防的アプローチ
- 小山珠美先生(NPO法人 口から食べる幸せを守る会 理事長)
- 口から食べる幸せを守るための包括的アプローチ
基調講演
一般生活者向け書籍の発行
LDH設立50周年を記念し、『歯みがき100年物語』を2017年1月19日に(株)ダイヤモンド社から発刊しました。
今から100年前、食生活の変化に伴いむし歯が急増し、子どものむし歯罹患率は96%にも達し大きな問題となっていました。しかし、2016年の調査では12歳児のむし歯罹患率は36%で、一人当たりのむし歯本数は0.84本と大きく減少しています。この背景には、100年前に強い危機感を持った歯科関係者と民間企業の地道な「口腔保健普及活動」の歴史がありました。
本書では「口腔保健の普及」に貢献した民間企業の活動とその原点でもある企業文化に焦点を当て、100年の足跡を豊富なビジュアルでたどりながら原点を見つめています。さらに「健康は口の中から」という視点で口腔保健普及活動の重要性をあらためて論じながら未来を展望する内容となっています。
日本の口腔保健にとって歴史的、学術的な資料として、また普及啓発の面でも少しでも役立てられ、幅広い人に読んでいただけるよう工夫して制作いたしました。
【書籍概要】
編者:公益財団法人ライオン歯科衛生研究所
発行:株式会社ダイヤモンド社
価格:本体1800円(税別)
2016年のLDHの主な口腔保健啓発活動
[母子歯科保健活動]
妊婦、乳幼児および園児とその保護者を対象に「歯と口の健康」を通じた子育て支援活動を実施。
参加者:乳幼児・園児 685名、保護者 716名
累計:114万名
[学校歯科保健活動]
児童・生徒や保護者に対する直接的な啓発活動と、保健指導者の活動に対する支援を実施。
参加者:児童・生徒 7,105名、
保健指導者 2,407名
累計:2,327万名
[成人(産業)歯科保健活動]
就業者を対象に、歯周病の予防と歯と口の健康の保持・増進に重点を置いた指導を実施。
受診者:27,562名
累計:207万名
[高齢者歯科保健活動(2007年~)]
いつまでも自分の歯と口で食べることができるように口腔機能の保持につながる支援を実施。
参加者:17,110名
累計:2万7千名
[診療活動]
リスクコントロール・デンティストリー*の考え方に基づき、専門性が高く、質の高い診療および予防歯科活動を実施。
受診者:11,435名
累計:184万名
* 一人ひとりのむし歯や歯周病のリスクに応じてケアの方法を変えるオーダーメイドの歯科治療
累計は財団設立(1964年)からの積算値
「ライオンアウォード」の設置
「予防歯科」の学会活動や若手研究者の育成を支援する目的で「ライオンアウォード」を2001年に創設しました。
本賞は、世界最大の歯科学会である「国際歯科研究学会(IADR)」と国内の「日本小児歯科学会」、「歯科基礎医学会」、「日本口腔衛生学会」、「日本歯周病学会」、「日本老年歯科医学会」5歯科学会に学術賞として設置され、創造的な研究を行った研究者に対して盾と賞金を進呈しています。
2001年の創設から16年間で154名の研究者が受賞しています。
ライオンアウォード授賞式
国際歯科研究学会(IADR)の様子
画像(左から)
柴崎オーラルケア所長、角井取締役、Dr. Roger Junges、Dr. Tomomi Kawai、鈴木国際事業本部長
学会名 | 授賞式開催都市 | 授賞式開催日 | 受賞者(所属) |
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国際歯科研究学会 (IADR) |
Seoul, Korea | 6月23日 | Rojer Junges (University of Oslo, Norway) Tomomi Kawai (Tsurumi University, Japan) |
日本小児歯科学会 | 東京都 | 5月26日 | 河上智美 (日本歯科大学生命歯学部小児歯科学講座 准教授) |
歯科基礎医学会 | 北海道 | 8月25日 | 阪井丘芳 (大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室 教授) |
日本口腔衛生学会 | 東京都 | 5月29日 | 竹下徹 (九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座 口腔予防科学分野 准教授) |
日本歯周病学会 | 新潟県 | 10月7日 | 石原裕一 (松本歯科大学歯科保存学講座 教授) 柳田学 (大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座 助教授) |
日本老年歯科医学会 | 徳島県 | 6月18日 | 小谷(上澤)祐子 (昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 講師) |
キッザニアへの出展
キッザニア東京・キッザニア甲子園に「歯科医院」パビリオン出展
当社は、2006年に「キッザニア東京」、2009年に「キッザニア甲子園」に「歯科医院」をテーマにしたパビリオンを出展しています。「歯科医院」パビリオンを体験してもらうことで、歯の大切さを学び、お口の健康を自分でケアすることで全身の健康も守れることを知ってもらいたいと考えています。
当パビリオンでは歯の大切さを勉強し「予防歯科医」としての研修を受けてもらった後、診療台の上のフィギュア(歯科大学での実習用)にむし歯治療とフッ素塗布をしてもらい、キッザニア専用通貨で8キッゾの報酬を得ることができます。
「歯科医師」の仕事を体験した子どもたちからは、「治療をするのはすごく大変だと思った。」「絶対歯みがきを頑張って、むし歯をつくらないようにしたい。」などの声も聞かれ、むし歯予防の大切さがしっかりと伝わっているようです。
キッザニア東京の「歯科医院」パビリオン
フィギュアにむし歯治療をする様子
キッザニア甲子園の「歯科医院」パビリオン
「予防歯科医」としての研修を受ける子どもたち