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「NANOX one」に備わるコンプリート洗浄(洗浄・消臭力、色変化防止力)技術の開発

開発背景

近年、地球環境やSDGsへの注目が高まり、資源の持続可能な利用やその取組みにも高い関心が寄せられています。特に、洗濯との関わりも深いアパレル業界では、衣類の製造過程で多くの二酸化炭素が排出されるとともに、多量の水やエネルギーが使用されるため、環境に大きな負荷を与えていることが指摘されています※1。また、環境省の調査※2によると、日本国内で家庭から廃棄される衣類の総量は約49.6万トン/年であり、衣類の廃棄過程においても環境負荷が生じています。改善に向けては、1つの衣類を長く大切に使用するなどの衣類のライフサイクルの見直しが重要であり、衣類に関連する企業だけでなく生活者の行動変化が必要です。当社独自の生活者調査によると、白系の衣類では「黄ばみ・黒ずみ」、黒・紺系の衣類では「色褪せ」、が衣類の廃棄理由として割合が高いことがわかりました※3。そこで当社では、衣料用洗剤でこれら廃棄要因にアプローチするため、洗剤の基本価値である「洗浄力」を高めることに加え、衣類本来の色を保つ「色変化防止力」を付与する技術を開発しました。
※1 経済産業省、ファッションの未来に関する報告書、2022.
※2 株式会社日本総合研究所、環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務-「ファッションと環境」調査結果、2021.
※3 2022年9月 WEB調査、ライオン調べ(n=2560)

技術開発①:洗浄力

洗浄力を高めるために、生活者が落とし難く、かつ汚れる頻度が高いと感じている「皮脂汚れ」と「食べ物汚れ」に着目しました。ここでは特に黄ばみ・黒ずみの原因の一つである「皮脂汚れ」に対する検討結果を紹介します。
皮脂汚れは、タンパク質や脂肪酸のような有機物、無機物等からなる複合汚れです。その中でも、有機物である固体脂や疎水的なタンパク質は、洗濯後も衣類に残存し蓄積されやすいため、黄ばみ・黒ずみ促進の要因となります。そこで、固体脂と疎水的なタンパク質に対して高い洗浄力を付与する洗剤を検討しました。まず、固体脂の疎水的な性質に着目し、洗浄成分である界面活性剤の構造をより疎水的にすることで、高い洗浄力を目指しました。種々検討した結果、疎水性を高めた界面活性剤A(以下、高機能界面活性剤)を配合した洗剤では、当社従来洗剤(NANOX)と比較して、高い洗浄力があることを見出しました(図1)。この高機能界面活性剤を洗剤使用量が少ない濃縮タイプの洗剤に配合、課題となりやすい析出や白濁が生じにくい組成を開発しました。

図1.固体脂に対する各界面活性剤候補を配合した組成の洗浄力評価結果

次に疎水的なタンパク質に対しては、タンパク質分解活性が高い酵素C(以下、高性能酵素)を選定しました(図2)。この高性能酵素は、長期間失活しにくく、析出も生じにくいという特長を持ちます。さらに、高性能酵素が洗剤中で失活することを防ため、酵素の安定性を保つ組成を開発しました。

図2.各酵素候補の分解活性評価結果

技術開発②:色変化防止力

洗剤への色変化防止力の機能付与に関しては、繰返し洗濯した際に生じる「衣類の色褪せ抑制」と黒ずみ・黄ばみの要因の一つとなる「汚れの再汚染抑制」、の2つに着目しました。ここでは「衣類の色褪せ抑制」に対する検討結果を紹介します。
衣類が色褪せる要因は様々存在しますが、一般的に、洗濯中の衣類が、洗濯機や他の衣類と擦れることで色褪せに繋がっていることが知られています。そこで、洗濯中の衣類への「摩擦低減」による色褪せ抑制効果の実現を目指しました。まず、高機能界面活性剤と高性能酵素を配合したプロト組成の洗剤および従来洗剤で洗濯時を想定し、液中の衣類の摩擦性を測定しました。摩擦性は、洗浄液に繊維モデルを浸し、剛体振り子試験機にて摩擦性の尺度となる振子の対数減衰率で評価しました(図3)。その結果、どちらの洗剤で洗濯した場合でも、摩擦は同程度であることを確認しました。そこで、当社の過去の知見などを元に、プロト組成に様々な基剤を配合し評価したところ、特定のポリマー(以下、特殊ポリマー)を配合することで衣類の摩擦を低減することを見出しました(図4)。さらに、特殊ポリマーを配合した洗剤で黒色衣類を繰返し洗濯し、官能評価(シェッフェの一対比較)をした結果、色褪せ抑制効果があることを確認しました(図5)。

図3. 剛体振り子試験機を用いた摩擦性評価
図4. 洗濯中の衣類の液中摩擦性
図5. 色褪せ抑制効果

まとめ

「洗浄・消臭力」「色変化防止力」に関する技術を総称して、当社では「コンプリート洗浄」と呼び、衣料用液体洗剤「NANOX one」に搭載しました。洗剤から衣類のロングライフ化にアプローチし、お気に入りの衣類を長く楽しむことができる社会の実現に貢献していきます。

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