ウイルスの家庭内感染が増加している昨今。家族の罹患を防ぐためにも、家庭内でのウイルス接触感染リスクについて正しく知ることが何よりも重要です。
そこでライオンは、「家庭内へのウイルス持ち込み」とその付着・伝播の実態について調査しました。
その結果、手洗いに一定の効果があることとともに、手洗いの意外な盲点も見えてきました。
手洗いは、家庭でできるウイルス感染対策の基本です。
外から帰宅した直後は必ず手洗いをするというのが習慣になっている人も多いでしょう。実際、20~69歳の生活者1万人を対象に帰宅後の手洗い行動についての調査を行ったところ、およそ9割の人が「帰宅後、手を洗う」と回答しています。
しかし、帰宅後、ただ手を洗うだけでは、外から家庭に持ち込まれるウイルスの伝播を防ぐことはできていないことがライオンの調査でわかりました。
その理由は、「手洗いまでの短い時間に、様々なものに接触している」から。
私たちは、知らず知らずのうちに手洗い前にウイルスを家庭内に広げていたのです。
一般家庭を対象に実施された、家庭での実際の行動を観察したモニタリング調査によると、帰宅してから手を洗うまでの間にリビングやキッチンなどに立ち寄り、手洗い前に色々な場所に触れている様子が見て取れます。多くの人にとって、帰宅してから一息つくまでの行動は、習慣化され特に意識せずに行われています。そうした無意識の行動として、手洗い前にキッチンに行って何かに触ったり、カウンターに触れたり、ソファに触っていました。
また、約100件の行動データやウイルス伝播率などをもとにしたAIシミュレーションでは、帰宅後30分以内でウイルスが玄関周りやキッチンなど広範囲に付着していることが確認できました。一般生活者の帰宅時の平均的な行動で、室内の様々なところにウイルスが伝播することがわかったのです。
ウイルス付着量が多かったのは玄関付近やリビング、キッチンのドアノブ等で、かばんや買い物袋等の携帯物などにもウイルス残留数が多い結果となっています。
AIシミュレーションでは、手洗い実施によるウイルスの拡散分布の変化についても調べました。これは、家庭内にウイルスが持ち込まれたとき、手洗いの有無でウイルス付着量がどう変わるかがわかるものです。
これによると、手洗いにより手に付着したウイルスの量は減少しますが、他の箇所のウイルス量はあまり変わらない結果となりました。手洗い前に様々なものに接触してしまっているためです。
つまり、ただ手洗いするだけでは、ウイルス拡散を防ぐことは難しいことがわかります。
手洗いをすれば手に付着したウイルスを減少させる一定の効果はありますが、重要なのは手を洗うタイミングなのです。
そこで、AIシミュレーションを用いて、家庭内にウイルスが持ち込まれたときに手洗いのタイミングの違いでどの程度広がり方が変わるのかを調べました。
このシミュレーションでは、帰宅時に一定量のウイルスが手に付着していたと仮定し、帰宅後30分間で家の中のどの場所にどの程度ウイルスが付着しているかを算出。その際、帰宅後の30分間に「手を洗わなかったケース」と、玄関のドアを開けて鍵を閉め、靴を脱ぎ、そのまま洗面所に向う「早めの手洗いをしたケース」、それに加え「帰宅直後に玄関で手指消毒する」ケースに分けて、家庭内のウイルス量を検証しました。
その結果、付着していたウイルスとその量を家の間取り図に示したのが下記ヒートマップです。
「30分間手を洗わなかったケース」では、家の中の多くの箇所にウイルスが付着していることがわかります。
一方、「早めの手洗いをしたケース」は「30分間手を洗わなかったケース」と比べウイルス量は3割以下に抑えられました。
さらに「早めの手洗い+帰宅直後に玄関で手指消毒」の場合は、ウイルス量を「手を洗わなかったケース」の約1割に抑えられるという結果になったのです。
また、帰宅時の行動シミュレーションでは、手洗いまでの間に多くの家財に触れ、その回数は最大で91回にのぼるという結果が出ました。
ドアノブや壁、テーブルなどに触れた回数が増えるほど、家庭内で伝播するウイルス量も増えており、早めの手洗いが重要であることがわかったのです。
シミュレーション結果から、手洗い前に注意すべきポイントが見えてきます。
手洗い前に触るものや、携帯物・所持品はウイルスの付着が多いことがわかりました。
ドアノブや照明のスイッチなどにもウイルスがついてしまう場合があるので注意が必要です。
冷蔵庫に食材を入れる、テレビをまずつけるなど、キッチンやリビングは帰宅後に最初に訪れがちなエリアだと考えられます。
冷蔵庫やキッチン周り、リビング内には、生活する上で頻繁に触るものが多くあるので、特に注意しましょう。
手洗いは、感染対策の第一歩であり、最も身近な衛生行動です。
思わぬところでウイルスを広げてしまわないためにも、以下の行動で手洗いの効果を上げることを推奨します。
帰宅後にまず、買ってきたものをキッチンで整理したり、リビングに物を置いたり、着替えるためにあちこち触ったりしていないか自身の行動を振り返ってみると良いでしょう。
これまでつい習慣として無意識にやってしまっていた行動を見直し、「帰宅後すぐ洗面所直行」を心がけましょう。
シミュレーションでは、帰宅後すぐの手指消毒を組み合わせることで、ウイルス量を大幅に抑えられることがわかっています。
手洗い前に行ってしまう場所や触ってしまうものへのウイルス伝播を防ぐためにも、玄関での手指消毒をおすすめします。
ウイルス伝播を防ぐためには、きちんと手を洗うことが大切です。
子どものいるご家庭では、手洗いを子どもに任せっきりにせず、親子で一緒に洗面所に向かう「付き添い洗い」をするとよいでしょう。なお、手を洗うときはハンドソープを使用し、しっかり泡立てて、洗い残しが多い「指先」「指と指の間」「手首」を忘れずに洗いましょう。
自分のため、大切な家族や守りたい人のために、正しい手洗い習慣と手指の消毒習慣を身につけましょう。
気になる衛生情報や研究情報など