ライオン株式会社(代表取締役兼社長執行役員:竹森 征之)は、株式会社日立製作所の日立健康管理センタ(茨城県日立市)との共同で、従業員の歯科受診と仕事のパフォーマンスの関係を調べました。その結果、口腔内の所見およびプレゼンティーズム※1が認められ、過去1年間歯科医療機関を受診していなかった従業員のうち、その後1年間に歯科受診をした従業員は、受診しなかった従業員と比べて仕事のパフォーマンス改善率が約1.5倍高いことを確認しました。高校卒業後は、学校歯科健診などで定期的に歯や口の状態を確認する機会が少なくなります。特に、20・30代では歯科受診率が低い傾向にあり、見過ごされがちな歯や口の不調が仕事のパフォーマンス低下をもたらしている可能性があります。本結果は、歯科受診が従業員の生産性改善に繋がる可能性を示した初めての知見※2となります。
また、今回の知見を実際の企業の健康経営における活用に役立てていただくため、10年以上にわたる共同研究成果の一部と、企業における歯と口の健康への取り組み方法をまとめた「働く人のおくち白書」をWEB公開しました。当社は今後も、研究で得られた知見を活かし、製品・サービス開発を通じて見過ごされがちな「おくち不調」の改善による働きやすさの向上への取り組みを支援してまいります。
※1 出勤しているにもかかわらず、健康上の問題などで生産性が低下している状態
※2 PubMed、医中誌WEBに掲載された原著論文に基づく(2026年8月17日 当社調べ)
要旨
- 歯科受診をした人は、しなかった人に比べ、仕事のパフォーマンス改善率が約1.5倍に
- 上記の歯科受診をしなかった群のパフォーマンス損失は、従業員100人あたり2.6人分に相当する可能性
- 研究で得られた知見と、企業での歯と口の健康の考え方や実践のポイントをまとめた「働く人のおくち白書」をWEB公開
■研究背景
近年、企業では、従業員が不調を抱えながら勤務することで業務効率が下がるプレゼンティーズムへの対応が課題となっています。そのなかでも、歯や口に関する「おくち不調」は、痛みや口臭に対する不安等から、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼしている可能性がある一方で、本人が問題を後回しにしやすく、周囲にも相談しにくいため、発見が遅れてしまいがちです。従業員の健康を支え、仕事のパフォーマンス向上を目指す企業側の立場からも、「おくち不調」はその実態を把握しにくく、知らないうちにパフォーマンス低下を引き起こし、企業に損失が生じている可能性が考えられます。そこで当社では、職場での健康診断における口腔健康データを用いて、おくち不調とプレゼンティーズムが認められた従業員を1年間追跡調査し、歯科受診と仕事のパフォーマンスとの関係について検証しました。
■研究概要
企業健診で口腔チェックを受けた従業員のうち、口腔内の所見とプレゼンティーズムが認められ、過去1年間歯科を受診していなかった人を対象に、翌年の企業健診までの1年間に歯科受診した群と受診しなかった群でプレゼンティーズムの変化を比較しました。
■研究結果
1.歯科受診で仕事のパフォーマンスの改善率が約1.5倍に
上記対象者のうち、1年以内に歯科受診をした群は、受診しなかった群と比べて、プレゼンティーズム指標(WFun※3)の改善率(14点未満に改善したか※4)が約1.5倍高いことが分かりました。この結果から、歯科受診が仕事のパフォーマンス向上に寄与する可能性が示されました。
※3 経済産業省が推奨するプレゼンティーズム測定法の1つで、7つの質問票から7-35点で労働機能障害の程度を算出する。
※4 WFun得点の解釈より参照(WFunの特徴)。14点未満では、労働機能に問題がないとされる。
図1.歯科受診とプレゼンティーズム指標改善率の関連性
2.上記の歯科受診をしなかった群のパフォーマンス損失は、従業員100人あたり2.6人分に相当する可能性
歯科受診をしなかった群と比べて、歯科受診をした群の方は、仕事のパフォーマンスが改善しやすいという結果が得られました。一方、歯科受診を怠ることで改善しなかった労働生産性の低下(プレゼンティーズム)は、企業にとって目に見えない大きな損失となる可能性があります。今回、歯科受診の有無による、、改善したプレゼンティーズム指標の差をもとに、従業員100人あたりの仕事のパフォーマンス損失割合として推計したところ、約2.6人分に相当することが分かりました。
図2.おくちの不調による仕事のパフォーマンス損失(従業員100人あたり約2.6人分相当・イメージ)
3.「おくち不調はあるのに、歯科には行っていない」人が44%存在する
口腔チェックの結果、口腔内に所見が認められた従業員の44%が、過去1年間に歯科を受診していないことも明らかとなりました。このことから、企業において口腔内に所見があっても歯科受診につながっていない人が一定数存在していると考えられます。またこのような従業員は、適切な受診支援によって、仕事のパフォーマンス改善に繋がる可能性があるにもかかわらず、その機会が見過ごされていると推察されました。
図3.口腔チェックで所見が認められた従業員の直近1年間の歯科受診歴
なお、本結果の一部は、2026年6月25日(木)に国際誌(Journal of Occupational and Environmental Medicine)に掲載されました。また、第99回日本産業衛生学会において、産業歯科保健分野への貢献が評価され、「産業歯科保健部会長賞」を受賞しました。
■今後の展望
当社は、オーラルヘルスケア領域の基本的考え方に基づくすべての企業活動を「LION オーラルヘルスイニシアチブ」※5として順次展開しております。その一環である当社オーラルヘルスケアサービス事業の『おくちプラスユー』では、歯と口の健康を通じた豊かな毎日を実現することで、企業の健康経営をはじめ、健康保険組合や自治体の事業を支援しています。今後も研究で得られた知見を活かし、「おくち不調」の改善による従業員の仕事のパフォーマンス向上への貢献に向けたサービス開発を加速し、より多くの人々の歯と口の健康増進、ひいてはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に貢献してまいります。
※5 ライオン中長期経営戦略フレーム「Vision2030」実現に向けたオーラルヘルス領域活動の総称。2022年8月8日発表(関連リリース参照)。
■研究に関するコメント
産業医として長年、生活習慣病対策や従業員の健康増進に取り組む中で、禁煙、運動、睡眠などさまざまな健康施策に関わってきました。その中で、栄養の入り口であり、全身の健康づくりの起点でもある口腔の健康に注目するようになりました。口腔の問題は、痛みや不快感だけでなく、食事や会話への支障などを通じて、従業員の働きやすさや仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。
今回の研究では、職域で口腔健康評価を受けた後に歯科受診した従業員において、プレゼンティーズムの改善がみられました。この結果は、口腔保健を個人のセルフケアだけでなく、職場における健康支援の一環として捉える意義を示唆しています。産業医の立場からは、企業が従業員の口腔不調に気付き、必要に応じてセルフケアや歯科受診に繋がる環境づくりを進めることが、健康経営において重要になると考えます。
■日立健康管理センタ
株式会社日立製作所病院統括本部配下4施設※6の1つであり、茨城地区を中心とした事業所の日立グループ従業員を対象に、人間ドックを実施しています。メタボリックシンドローム改善施策である「はらすまダイエット®」など、従業員の健康増進に積極的に取り組んでいます。
※6 日立総合病院、ひたちなか総合病院、日立健康管理センタ、土浦診療健診センタ
■おくちプラスユー
当社では、企業の従業員をはじめとした法人向けに、オーラルヘルスケアの習慣づくりを支援するサービスを提供しています。具体的には、唾液検査やセミナー、歯科医院の受診を促し、その後のセルフケアの習慣化まで支援するプログラムなどです。
お問い合わせ窓口
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