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初期ムシ歯の診断技術開発

生活者に最もなじみが深い口腔疾患の一つがムシ歯です。
私たちが経験するいわゆる「ムシ歯」は、歯に穴が開き痛みを感じるものです。最近の研究では歯に穴の開く前の、ごくごく初期の段階にムシ歯を発見し、ケアをすることで深刻なムシ歯にならなくてすむことがわかってきました。つまり歯を削って治療をしなくてすむという考え方が世界的に広がっています。
ライオンでは、この動向にいち早く着目し、1990年代から初期ムシ歯の診断技術開発に取り組んできました。その一つがQLFTMシステムです。初期ムシ歯は、外見上は健全な歯と見分けがつきにくく、ヒトの目では熟練した歯科医でないと発見できないことが多いため、客観性かつ定量性のある診断が必要とされます。青色の可視光を歯に照射すると、歯の内部から蛍光が発生しますが、結晶構造の粗い初期ムシ歯部分は、発生した蛍光が乱反射するため、健全な部分よりも相対的に蛍光が暗くなります。QLFTMシステムは、この現象を利用したもので、初期ムシ歯をビジュアル化し、また正確に定量することができます。図1は、人工初期ムシ歯にフッ素を配合した歯磨剤を14日間処理した際の経時変化を示しています。初期ムシ歯のビジュアル化により、その早期発見が可能となるだけでなく、再石灰化され健全な状態に近づいていく現象が簡便かつ定量的に立証できるようになりました。

一方、歯の厳密な内部構造を知るには、通常は歯を薄切化しレントゲン写真を撮る必要がありますが、ライオンでは非破壊手法であるマイクロフォーカスCT-スキャン(マイクロCT)技術を有しています。臼歯は、最もムシ歯になりやすい部位であり、その予防技術の確立には、臼歯の解剖学的な構造を経時的にかつ詳細に解析する必要があります。図2はフッ素配合歯磨剤処理前、処理後の臼歯のマイクロCTによる立体画像です。本技術の活用により、臼歯の溝の奥の初期ムシ歯部分が、フッ素を配合した歯磨剤で処理することで再石灰化され改善していることが確認できました。

これら最先端のムシ歯診断技術を製品開発に応用し、より機能の高い、新しいムシ歯予防歯磨を開発導入しています。

研究事例紹介

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