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香りと感情を科学する
~食器用洗剤×表情解析AIによる感性評価~

研究背景

当社は、製品の機能だけでなく、日々の家事がもたらす気分や心の状態までを対象とする「感性科学」の研究を推進しています。本研究では、憂鬱な家事の1つとして捉えられやすい食器洗いにおいて、食器用洗剤の香りがもたらす心理的効果に着目しました。従来のアンケートなどを用いた主観評価に加え、表情解析AIを用いた客観的な評価を新たに実施し、評価手法としての有用性を検討しました。

アンケートによる主観評価

憂鬱な食器洗いをポジティブな時間へ変えられるよう、食器用洗剤の香りとして「前向きになれるような香り」(以下、前向きタイプ)と「リラックスできるような香り」(以下、リラックスタイプ)の2タイプの香りを設計しました。生活者による調査※1では、食器洗い中「前向きタイプ」使用時には約83%の生活者が「前向きな気分」を、「リラックスタイプ」使用時には約92%が「リラックスした気分」を感じることが分かりました。

  • 1:自宅でサンプルを使用後にアンケート調査を実施(n=120、2025年5~6月)、(株)アスマーク実施

表情解析AIによる客観評価

当社が用いたのは、SOLO Wellbeing Ltd.社※2の表情解析AIです。スマートフォンカメラで撮影した顔の映像から、0.2秒ごとに微細な表情変化(微表情)を解析し、複数の心理指標を算出します。微表情から得られるデータをAIにより12個の心理指標※3に変換して評価することで、食器洗い中の感情状態を数値として連続的に追跡することが可能となります。本研究では、5つの指標の中から計測したい感情に合わせて「Mood(快・不快)」・「Energy(活発・平穏)」の2つの指標に着目し、食器洗い中の感情状態を数値化したスコアを、香りがない食器用洗剤と比較しました※4
まず、「快・不快」の感情を示す「Mood」スコアより、香りがない食器用洗剤を使用すると不快に感じる傾向が見られた一方で、香りがある食器用洗剤を使用することで不快な気分が軽減され、快側に変化することが確認できました(図1)。特に、「前向きタイプ」を使用すると快い気分を感じる傾向にあることが分かりました。

図1. 香りの有無による「Mood」スコア変化度

続いて、「活発・平穏」の感情を示す「Energy」スコアを確認しました。いずれのデータも平穏方向となり、食器洗いという行動における感情は、平穏的であると考えられます。特に「リラックスタイプ」を使用した場合には、平穏的な感情が大きく増大され、より落ち着いた気分に導かれていることが分かりました(図2)。

図2. 香りの有無による「Energy」スコア変化度

以上より、表情解析AIによる評価からも、「前向きタイプ」は前向きな感情の喚起に、「リラックスタイプ」は落ち着いた感情への寄与に、それぞれ効果があるという主観評価と整合する結果が得られました。

  • 2:AIによる表情解析ソリューションを開発・提供する企業
  • 3:Mood・Energy・Wellbeing・Stress・Happy・Neutral・Angry・Sad・Surprised・Disgusted・Fearful・Intensity
  • 4:当社パネル(n=33)で評価し、スコアを算出

まとめと今後の展望

これまで、香りが生活者に与える感情状態の評価には、食器洗い後に実施するアンケートによる主観評価が主に用いられてきました。これに対し、本研究で用いた評価手法を活用することで、客観的かつ、アンケートとは異なり、食器洗い中の感情を測定できるため、評価のタイミングに制限がかからず感情を評価することが可能となりました。また、一見無表情にも思われる食器洗い中の微表情の変化から、多くの情報(感情の変化)を読み取ることができた点が興味深い知見です。なお、本技術は『CHARMY Magica 手肌+(プラス)除菌』の香料開発に活用しています。
当社は今後の生活者研究において、表情解析という手法を、感情を科学的に扱うための有効なアプローチの1つと位置づけていきます。さらに、こうした評価技術を活用しながら、「生活行動そのものを前向きで心地よい時間に変えていく」ための研究基盤の構築・発展をはかっていく予定です。

【関連リンク】
▼製品情報
『CHARMY Magica 手肌+(プラス)除菌』

【食器用洗剤】Magica(マジカ)|ライオン株式会社

研究事例紹介