近年、従業員が何らかの不調を抱えながら勤務し、その結果として仕事のパフォーマンスが低下するプレゼンティーズムが、企業の健康経営®※2にとっての重要な課題の1つとなっています。
当社では、口腔の健康に着目し、株式会社日立製作所 日立健康管理センタとの10年以上にわたる共同研究を通じて、これまでに、口腔健康評価の導入による従業員の口腔ケア行動や歯ぐきの健康状態の変化、全身の健康指標との関連など、職域における口腔健康に関する知見を得ています。
これらの研究成果をもとに、おくちの健康が仕事のパフォーマンスに与える影響、企業が従業員のオーラルヘルスケアを推進する際の実践ポイントをまとめた白書をWeb公開しています。ぜひご覧ください。
※1 本人が気づいていない、あるいは気づいていても対処や相談に至っていない状態や、企業・周囲から把握されていない状態を含む、おくちの不調
※2 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です
。
日本歯科医師会が一般生活者1万人を対象に実施した意識調査では、この1年間に「歯や口のトラブルで日常生活のパフォーマンスが落ちた」と感じた人が、全体の約4割に上りました※3。また、同調査では、約4割の人が、パフォーマンス低下の原因が口腔トラブルであることを周囲に言いにくいと回答しています※3。
一方で、おくちの不調には、歯の痛みや口臭への不安など、本人が自覚しやすい不調や悩みだけでなく、初期には自覚しにくい歯周病などの口腔疾患も含まれます。こうした不調は、職場においても仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性がある一方で、本人も企業側も把握しにくいことから、「サイレントおくち不調」として見過ごされている可能性があります。
こうした背景を踏まえ、当社は日立健康管理センタとの共同研究を通じて、職域における口腔健康評価のデータを用いて、歯科受診と従業員の仕事のパフォーマンスとの関連を検証しました。
※3 公益社団法人日本歯科医師会「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(調査期間:2024年9月11日~13日、対象:全国15~79歳男女10,000人、インターネット調査)
本研究では、歯や歯ぐきに所見がありながら、過去1年間で歯科受診をしておらず、プレゼンティーズムが認められた従業員を1年間追跡し、歯科受診の有無によるプレゼンティーズム指標(WFun得点※4)の変化を比較しました。
対象集団:株式会社日立製作所 日立健康管理センタにおいて口腔健康評価を実施した従業員
研究期間:
初回評価期間:2018年4月1日~2019年3月31日
追跡評価期間:2019年4月1日~2020年3月31日
解析対象者数:501名(ベースラインにおける口腔評価参加者のうち、下記条件を全て満たしたもの)
① 歯もしくは歯ぐき、あるいはその両方に所見を認めた
② 初回評価時から遡って過去1年間、歯科医院の受診をしていなかった
③ 初回評価時にプレゼンティーズムが認められた(WFun得点が14点以上 / 35点満点中)
※4 本研究では、プレゼンティーズム指標としてWFun(Work Functioning Impairment Scale)得点を使用した。WFunは経済産業省が推奨するプレゼンティーズム測定法の一つで、7つの質問票から7~35点で労働機能障害の程度を算出する。点数が高いほど労働機能障害が高いことを示し、点数が低下するほど、労働機能障害が改善したことを示す。本研究では、WFun得点が14点未満となった場合を「改善」と定義した。WFun得点は人間ドック内の問診結果より抽出し解析に供した。
1年間の追跡評価の結果、歯科受診をした群(n=82)は、受診しなかった群(n=419)と比較して、プレゼンティーズム指標の改善率が有意に高いことが示されました(図1)。
このことから、歯や歯ぐきに所見が認められた従業員を歯科受診につなげることは、仕事のパフォーマンス向上に寄与する可能性が示されました。
本研究は、株式会社日立製作所 日立健康管理センタとの共同研究として実施し、その成果は国際学術誌 「Journal of Occupational and Environmental Medicine」 に掲載されました。また、本研究成果は第99回日本産業衛生学会にて発表し、産業歯科保健分野への貢献が評価され、「産業歯科保健部会長賞」を受賞しました。
当社は、今後も株式会社日立製作所 日立健康管理センタとの共同研究を通じて、職域における口腔健康と全身の健康、仕事のパフォーマンスとの関連について研究を進めるとともに、得られた知見の社会実装を通じて、人々の健康増進とQOLの向上に貢献してまいります。
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