洗剤を使い終えたら、中身だけを詰め替えて容器を使い続ける。今では当たり前の習慣になっている「詰め替え」は、どのようにして定着していったのでしょうか。
日本における洗剤の詰め替え製品の普及率は8割を超えています※1。生活者が詰め替えるというひと手間をかけることで、ごみを減らして環境に配慮できるうえ、商品も少しお得に買える。こうしたメリットが支持され、日本の日常生活にすっかり溶け込んでいます。
ライオンは「日々の暮らしを通じて社会をより良くする」という想いのもと、限りある資源を大切する取り組みとして「詰め替え」にいち早く着目し、人々の暮らしと向き合ってきました。ここでは、その歴史をご紹介します。
※1 付け替え含む。出典:日本石鹸洗剤工業会「CLEAN AGE」273号(2023年3月更新)2021年度調査
1900(明治33)年発売の『ライオン歯磨慈善券付袋入』は、ハミガキの紙袋をごみとして捨てるのではなく、裏面に「慈善券」と印刷し、金券としての価値を持たせた画期的な商品でした。その仕組みは、顧客が3銭で購入した空き袋を孤児院などの慈善施設に届けると、施設がそれを当社(当時の小林富次郎商店)へ送り、1枚につき1厘で買い戻して現金化するというものです。日本初のパッケージを利用した社会貢献の取り組みは、1901(明治34)年1月から1920(大正9)年12月までの20年間にわたって続けられ、多くの施設への寄付に繋がりました。裏書に「千里の行も一歩より始まる。大海も一滴の水より成る」とあるように、小さな活動でも集まることで大きな成果に繋がることを、同品を使用した方々も体感されたのではないでしょうか。
この「日々の暮らしを通じて社会をより良くする」という発想は、時代を経て形を変えながらも受け継がれ、限りある資源を大切にし、地球環境にもやさしい「詰め替え」という新たな習慣の提案へと受け継がれていくことになります。

当社では、1956(昭和31)年に『詰かえ用ライオン潤製歯磨』を発売しました。潤製歯磨とは、粉ハミガキに適度な水分を持たせて使い勝手をよくしたもので、ガラス瓶入りのものが売られていました。まだ使えるガラス瓶を再利用できるように、歯磨の中身だけを金属箔袋に包んで紙箱に入れたのが写真の商品です。パッケージには、店頭で商品をご覧になったお客様が一目で使い方がわかるよう、ガラス瓶に中身を詰め替えている写真を中央に配置していました。当時としては、とてもユニークな意匠だったそうです。
使い切ったら新しい粉を詰める。今でこそ「サステナブル」という言葉で語られる行動ですが、容器をすぐに捨てるのではなく繰り返し使うという仕組みは、ものを大切に扱っていた当時の人々の感覚に寄り添った、「より良い習慣」の提案だったと言えます。


その後、日本は高度経済成長とともに、大量消費・大量廃棄が進みました。家庭ごみの増加という深刻な社会問題となった1990(平成2)年、当社は「環境保全に関する方針」を策定しました。プラスチック使用量の削減を主要課題に掲げ、法規制が整う前から積極的な対応を始めていました。
家庭ごみを中心とした一般廃棄物の増加により、最終処分場におけるごみ処理の残余容量は極めて逼迫した状態となりました。このような状況を背景に、1995(平成7)年には「容器包装リサイクル法」が制定されました。ライオンでは、リサイクル法の制定よりも早くから、ごみ削減に向けた取り組みを開始していました。その頃発売した詰め替え容器について紹介します。
台所用洗剤『ナテラ』で採用したのが、手で簡単に開けられる注ぎ口や詰め替えやすさを追求した自立型のプラスチック製の袋「スタンディングパウチ」です。本体ボトルに比べてプラスチック使用量を約70%削減できます。その後、当社の液体洗剤や衣料用漂白剤など、多くの詰め替え製品に採用されるスタンダードな容器となりました。

シャンプーやボディソープのような化粧品類のイメージに配慮しながら、人々に詰め替えてもらうため、紙製の詰め替え容器の『植物物語ボディソープ』も発売しました。
今でこそボディソープの詰め替えは当たり前ですが、当時は当たり前ではありませんでした。本容器のごみの容積は本体のポンプボトルと比較して1/5以下、重量は約4割、燃焼カロリーも約1/5に抑えられています。
この詰め替え容器は、世界包装機構(WPO:World Packaging Organisation)主催の「ワールドスターズ・フォー・パッケージング‘94」において「ワールドスター賞」※2を受賞しました。
※2 世界包装機構(WPO)が主催する、世界で最も権威のあるパッケージングコンテストにて、優秀な作品に贈られる賞

洗濯用粉末洗剤『ハイトップ』の詰め替え容器は、さらに一歩進んだ設計に挑戦しました。
プラスチックを使用せず、100%再生紙で作られたパッケージです。本体容器に立てかけて10秒で簡単に詰め替えることができ、手を汚さず開けられるためハサミも不要な設計でした。詰め替え後は小さくたたんで廃棄でき、ゴミの量は本体サイズと比べて約1/10に、燃焼カロリーも約1/2になります(数値は当時のハイトップ大サイズとの比較値)。当時の資料には「プラスチックを全く使用していません」と明記されており、紙素材を活用した環境対応への強い意志がうかがえます。


台所用洗剤『チャーミーコンパクト』では、詰め替え用に薄肉の省資源ボトルを採用しました。プラスチックの使用量は本体ボトルのわずか1/2でありながら、容量は本体の約2本分。まるめて捨てれば体積は本体の1/8まで小さくなる設計です。詰め替え用ボトルは簡単につぶして丸められるため、捨てる際もかさばりません。当時としては世界最高レベルの超軽量化を実現し、日本包装技術協会最高の賞である「木下賞」※3を受賞しました。
「詰め替えやすさ」と「薄さ・強度」を両立といった技術的な挑戦であり、社外からも高く評価されました。
※3 日本包装技術協会第二代会長で包装界に多大な功績のあった故木下又三郎氏の功績を記念して創設された表彰事業で、包装産業に貢献のあった製品・技術に与えられる。「研究開発」「改善合理化」「新規創出」の三部門があります。

紙、パウチ、薄肉ボトルへと形を変えながら、当社は一貫して「詰め替えしてごみを減らす」習慣を提案し続けてきました。2022(令和4)年には『NONIO(ノニオ)マウスウォッシュ』において、このカテゴリーとしては初の詰め替えパウチも発売しました。
詰め替えやすくするための工夫にも取り組んでいます。各製品を本体へ詰め替える際、製剤が溢れないよう本体容器の一部を透明にして詰め替え線を入れ、液面の高さがわかりやすいようにしました。2010(平成22)年発売の衣料用液体洗剤容器では、本体容器の詰め替え性、液だれ防止性を向上させた「液体洗剤用ユニバーサルデザイン」を開発しました。この容器は、新規性・独自性が高く評価され、木下賞※3にも選ばれました。


今後は、海外関係会社の製品展開を通じて、詰め替え習慣をアジアを中心とした海外にも広げていきます。
暮らしの中の小さな「詰め替え」という行動は、100年以上にわたる環境への想いと技術の蓄積によって支えられています。当社はこれからも、毎日の暮らしに無理なく取り入れられる「環境にやさしい習慣づくり」を通じて、持続可能な社会の実現を目指していきます。



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