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「口腔衛生手」の養成

ライオン児童歯科院の活動の中で、歯科関係者の方々の間で高く評価していただいていることの一つに、歯科衛生士の養成があります。
ライオン児童歯科院では「口腔衛生手」または「口腔衛生婦」と称していますが、今日の「歯科衛生士、Dental hygienist」のことです。
当時、米国ではすでに歯科衛生士が歯科医を補助していましたが、日本ではまだ存在していません。そこで、ライオン児童歯科院は創立当初から「口腔衛生手」の養成を行い日本の歯科界に寄与したいと考えていました。
下の写真はライオン児童歯科院が新聞に掲載した「婦人口腔衛生手」の募集広告です。
広告に書かれている「養成規定」を見てみましょう。資格は、高等小学校卒業以上で年齢25才以下の婦人。修行年限は6ヵ月間、その間の授業料は無料で、「修行中は事情により相当の給付をなすべきことあるべし」となっています。
修行課目は解剖学、生理衛生学、病理学、治術学、口腔衛生学、看護学、補綴学です。
授業時間は午前8時~11時までの1日3時間。「本養成所を卒業したるものは本院に於て相当給料を以って採用することあるべし」という条件もついていました。しかし実際のところ、この当時は養成所を卒業しても口腔衛生手としての就職の途はなかったので、ライオン児童歯科院で助手として採用しました。
第1回の募集は1922(大正11)年1月に実施し、15名の応募者があり3名を選んでいます。そして、1938(昭和13)年の閉院までに29名の婦人口腔衛生手を養成しています。
その後、日本で歯科衛生士養成のための公的機関「日本女子歯科厚生学校」が開設されたのは太平洋戦争後の1949(昭和24)年8月のことでした。時間的なことだけを言えば、ライオン児童歯科院の歯科衛生士養成は、国の行政に27年も先行していたのです。

婦人口腔衛生手の募集広告(1921(大正10)年)

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