妥協を許さない研究で、確実な安心と信頼を届ける安全性評価の業務
写真左より、相澤聖也研究員、小島聡史研究員、中條千晶研究員

妥協を許さない研究で、確実な安心と信頼を届ける安全性評価の業務

ハミガキから洗剤、医薬品に至るまで、人の健康、快適、清潔・衛生に繋がる幅広い製品を提供しているライオン。それらの製品を安心して使っていただくために欠かせないのが、安全性評価だ。
ライオンでは、安全性を担保するために新たな試験法の開発や、先進技術の活用を通じて、国内外の事業に関わる全ての製品・原料に対して安全性の評価を実施している。
確かな技術と知見で生活者のくらしを支える、安全性評価に携わる研究員とその業務を紹介する。

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プロフィール

小島 聡史
入社以来、一貫して安全性の研究に従事。ライオングループの製品全般の安全性評価業務を担う。
相澤 聖也
安全性研究の中でも、新規試験法や新技術構築を主に担当。
中條 千晶
安全性研究の中でも、国内外の情報収集・解析を主に担当。

INDEX

当たり前の毎日を支える製品を、安心して使っていただくために欠かせない「安全性研究」

「ハミガキ、ハンドソープ、衣類・住居用洗剤といった生活用品から医薬品・健康食品に至るまで、ライオンは生活を清潔に、そして快適にする様々な製品を開発しています。含まれる物質による肌荒れなどの身体への影響がないか、使用時に生じる排水での環境への負荷はどうか等、生活者が製品を使用した際にあらゆる面で悪影響がないかを検証するのが我々の仕事です。安全性評価を実施しない製品はありません。各製品や素材に沿った評価項目や基準を設け、日々、細部に至るまで評価を実施しています」そう話すのは、当社製品の安全性業務をまとめる小島研究員。

一般的な製品は数十種類の成分を組み合わせて開発するが、これまで使用した実績がないような新規成分の配合を検討する場合は、複数段階で評価する。まず成分単体の安全性を評価し、各種成分の大まかな組み合わせと配合量が決まった段階でプロトタイプの製品を評価、さらに発売前の最終的な組成で再評価――といった具合に、何段階もの安全性評価を経て、ようやく生活者にお届けできる。常に安全性を担保するという意味で、使用実績のある成分を組み合わせた製品であっても、安全性評価をせずに世に送り出すということは決してない。

その理由について、小島研究員は「成分単体では安全であっても、他の物質と混ぜることで安全性が担保できない場合もあるため注意が必要です。また、製品を安全に使っていただくために、実際の使用シーンを想定した検証も不可欠です。例えば、台所用洗剤であれば手肌への刺激性だけでなく、口から体内に取り込まれたときの人体への影響や誤って眼にはねた場合の刺激性など、様々な角度で検証しなければいけません」と話す。

リアルな生活シーンから、起こりうるリスクに向き合う安全性の追求

配合量の微差で安全性が変化することも。評価現場では、常に緻密な作業が求められる

「安全性評価で最も重要なのは、評価項目と判断基準、それに合わせた試験方法をどう設定し、評価するか。例えば、台所用洗剤は食器を手で洗うことを想定しているため、主要な評価項目は『皮膚への影響』であり、皮膚に刺激を生じないことや、アレルギーを誘発しないことが主な判断基準となります。それだけではなく、食器に残留した微量の洗剤成分を食品と一緒に摂取することも考えられるため、洗剤が体内に取り込まれたとき、人体に悪影響がないかの確認も重要となります。中には、通常とは異なる方法で製品を使用される生活者もいるため、想定されうる誤った使用方法までを含めたシナリオを作成し、それに合わせた評価項目を設定・評価しています」と小島研究員。

安全性の検討を効率的に進めるために、小島研究員たちは開発担当者と初期段階から並走し、密に連携を取っている。

「評価結果をすぐに開発担当者へフィードバックし、一緒に対策を考えながら開発を進めることで、安全性の高い組成を早期に構築しています。私たちは様々な部門と議論を進めながら、安全性研究に取り組んでいます」と、全研究部所と横断的に関わっているのも安全性評価の特徴だと小島研究員は語る。

さらに、「台所用洗剤の研究員に『衣料用洗剤の方ではこんな事例があったよ』と情報を共有することで、衣料用洗剤で得られた知見を台所用洗剤で応用できないか検討が始まることもありました」と、安全性評価はあらゆる研究員の発想のヒントにもなっている。

デジタル技術を駆使した情報収集で、
安全性の最前線を伝えるスポークスマンの一面

過去の文献と、最新情報を照らし合わせ、膨大なデータを検証する様子

安全性評価の研究員が他部門の研究所から頼られる理由の一つには、日々目まぐるしく変化する社会情勢に対応した高い情報収集力と解析力が挙げられる。安全性に関する各種情報収集と解析を担当する中條研究員は、日本や海外の行政機関サイトはもとより、新聞情報やNGOに至るまで、毎日80を超えるサイトで当社製品の安全性に関連する最新動向をチェック。また、業界団体とも連携しながら、抜け漏れのない収集体制をとっている。こうした広範囲かつ膨大な情報を、スピーディに探るために活用しているのが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」だ。

「最新システムを導入することで、情報収集を自動化・効率化し、我々でなければできない解析や情報の判断などに時間を割くようにしています。必要な情報は即刻共有しつつ、得られた最新情報を月1回各部所に提供し、“安全性の報道官”のような役割も担っています」と中條研究員は微笑む。

欧州ではREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals、化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規則)という化学物質の安全性データを厳格に定める法律が存在する。「欧州では化学物質の課題が明確化され、世界に先駆けて規制が行われる傾向があります。欧州の規制動向はASEANが強く影響を受けるため、優先して情報収集を行い、そこで得られた情報を解析して国内外関連会社にタイムリーに伝達しています。とはいえ、単純に欧州に合わせるのではなく、本当にその基準が必要かどうかを科学的に検証することも必要です」といった工夫についても語る。

将来の安心と信頼を支える新たな試験法の立案に向けた、他社共創の活用

クリーンルームにて、新たな試験法確立に向けた実験に取り組む

ライオンでは、動物を使わない試験法(代替試験法)の開発にも積極的に取り組んでいる。特に「口への刺激性を評価する試験法(口腔粘膜刺激性試験代替法)」については、公的に認められた代替法が確立されておらず、オーラルケア領域に強みを持つ3社(ライオン、花王、サンスター)による共同研究で開発を推進している。

共同研究に携わる相澤研究員は、「市場ではメーカー同士が競争する一方で、安全性評価の試験法はメーカー同士の共創によって開発されるのが特徴です。最新の科学技術に基づいた信頼性の高い試験法を開発することで、安全性評価の質向上に努めています」と語る。

安全性評価の共同研究においては、各社が強みとする研究領域が異なることが幅広い視点に結びつく上、さらに各社の研究施設の特長を活かした検証ができるというメリットが生まれる。

「各社が抱える課題や研究の方向性が違うこともあるので、調整が難しいと感じることもあります。しかし、各社の意見をすり合わせ、より有用性の高い試験法の開発に繋げることは、大きなやりがいです。試験法開発は製品開発とは違い、目に見える形としては残りません。しかし、良い試験条件を設定できれば、試験法が10年20年と活用され続けることもあるのは研究者冥利に尽きます。多岐にわたる有効成分や添加剤の安全性評価が可能な試験法の確立に向け、日々研究を進めています」(相澤研究員)

生活者の信頼に対し、一度の失敗も許されないという使命感

評価方法や最新情報の取り扱いについて、議論を重ねることも珍しくない

安全性評価は、生活者の使用シーンを想定した評価項目の設定や評価、最新の規制動向の解析、新しい試験法の構築など、クリエイティブな側面も多い研究領域。同時に、発売直前の最終段階で安全性が確保できなかった場合、会社としての損失も大きくなる。
小島研究員は、「常に先を考えながら評価することを心がけています。開発初期段階でリスクを想定できれば、別の視点でのアプローチを提案することができます」と語る。なるべく早期に安全性リスクを見極め、安全性の高い製品の提供に向けた提案をすることが大きな責務でもあるのだ。

一方で、「製品開発のメンバーから難しい相談を受けた際、それが科学的に安全であると示せたときに『ありがとう』と言われると嬉しいですね。また、お客様から『安心して使える』などのお声をいただくこともあります。ライオン製品の安全性がお客様に届いていることがわかり、充実感に繋がると同時に、安全性評価に失敗は許されないと改めて気が引き締まります」とやりがいを感じている小島研究員。

「お客様にとって、ライオン製品が安全に使えることは当たり前。もし1回でも問題が起きてしまったら、それはお客様に対して取り返しのつかないこと。また、これまでライオン製品を信頼して使っていただいていたお客様に不安感を抱かせてしまうかもしれません。今後もお客様に安心して使っていただける製品を提供し続けることで、未来永劫、お客様のそばに寄り添うライオンであり続けます」と決意を語る。

ライオンの研究開発がこだわっているのは、決して製品づくりだけではない。当たり前と思われがちな「安全性」を追求し続けることで、生活者が安心して使い続けられる環境を提供することができる。安全性研究で、より良い生活習慣づくりに貢献していく。

・所属は取材当時のものです(2022年5月取材)

口腔粘膜刺激性試験代替法の開発に関する受賞歴

日本毒性学会優秀研究発表賞_ライオン相澤
第48回日本毒性学会学術年会 優秀研究発表賞 受賞
「ヒト3次元培養口腔粘膜モデルを用いる口腔粘膜刺激性試験代替法の開発-刺激性/無刺激性区分のためのクライテリアの検証-」
(花王株式会社・サンスター株式会社との共同研究により当社の相澤研究員が受賞)