サステナビリティ重要課題8 人権の尊重
目標
「ライオン人権方針」に沿って、事業活動によって影響を受けるすべてのステークホルダーの人権を尊重します。
指標(2030年) | 重要な人権問題に対する人権デューディリジェンスの対応実施率⇒100% |
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指標の進捗* (2022年実績) |
ライオングループ:100% |
2030年までの グローバル共通施策 |
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*ライオングループ、サプライヤーにおけるリスクアセスメント実施率
ライオングループは、事業活動を通じて引き起こしあるいは助長される人権への負の影響を特定、防止・軽減し、どのように対処するかということに責任をもつために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権に係る検討会にて外部有識者の助言を得ながら、以下のプロセスで人権デューディリジェンス*を推進しています。
当社グループの事業や事業概要の進展に伴い、人権リスクが変わりうることを認識し、自社グループで想定される人権課題を定期的に見直す等、取り組みの実効性を高めるためのより良い方法を模索していきます。
* 企業が人権を侵害するのを避け、侵害による被害者を救済するためにとるべき手段のこと
当社グループは、日用品の開発、製造、販売を主な事業としています。日用品の中でも、特に洗濯用洗剤等、洗浄製品を多く扱っています。この洗浄成分である界面活性剤には、再生可能でカーボンニュートラルな植物原料としてパーム油・パーム核油の誘導体を素原料として使用しています。パーム油は、マレーシア、インドネシアが主要な生産地であり、国や地域として人権リスクが高いだけではなく、違法森林伐採による森林破壊等、持続的な調達に関する問題がはらんでいると認識しています。具体的には、パーム農園の労働者に対する過重労働、児童労働、違法伐採(焼き畑)による煤煙被害等の労働・環境リスク及び当社製品への原材料の供給リスク、持続可能ではない原材料を使用することの様々なステークホルダーからのレピュテーションリスクに配慮する必要があります。
また、日用品には、個装及び移送のために段ボール等多くの包装材料として紙・パルプを使用しています。不十分な森林管理が懸念される木材由来のチップを素原料とした紙・パルプの使用による供給リスクやレピュテーションリスクが想定されます。
製造プロセスにおいては、多くの種類の原材料を多くの原材料メーカーから供給していただき、多くの生産委託先の協力を得ています。そのため、サステナビリティ活動が進んでいないサプライヤーとの取引には、原材料や製品の供給リスク及びレピュテーションリスクが想定されます。
さらに、日用品の企画・製造・販売においては、調達、研究、企画、生産、営業、管理等、バリューチェーン全体に複数の部門が配置されているとともに、2022年12月末時点で連結の従業員数は7500名を越え、業務内容が細分化されています。そのため、人種や性別による差別やハラスメント、また業務内容や待遇面等で従業員間でのトラブル等の人権侵害問題が発生し、円滑な業務遂行に支障が出ることも起こり得ます。
当社グループが事業展開している国や地域におけるバリューチェーン上で起こりうる顕在的・潜在的な人権リスクをより明確にするために「国際人権章典」「国連グローバル・コンパクトの10原則」「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」「子どもの権利とビジネス原則」をはじめとする人権に関する国際的な規範から、当社グループの事業活動で想定される人権課題*を以下の通り抽出しました。
人権課題の抽出にあたっては、ビジネスと人権を取り巻く社会的な情勢や国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP)、日本経済団体連合会が策定した人権に関するガイドライン等を参考にしています。
* 抽出した人権課題
強制労働 住居及び移転の自由 児童労働 教育を受ける権利 若年労働者の権利 労働組合を組織する権利・参加する権利 同一労働同一賃金 採用における差別 雇用条件・待遇における差別 機会・評価における差別 母性及び児童の保護 ハラスメント 思想・宗教の自由 過重労働・長時間労働 休息・余暇を持つ権利 適正な報酬・生活資金の支払い 労働の自由・雇用保険 安全かつ健康的な作業条件を享受する権利 生活水準及び健康の教授に関する権利 社会保障を受け取る権利 プライバシーの権利 地域住民の生活に及ぼす影響 水資源へのアクセス 環境マネジメント 消費者の安全と健康
抽出した当社グループの事業活動で想定される人権課題について、ステークホルダーである自社従業員・派遣社員、第三者請負を含むビジネスパートナー、サプライヤー、先住民を含むコミュニティ、消費者・生活者における顕在的・潜在的な影響評価を実施しました。
人権に対する影響評価の実施に際しては、「国連指導原則報告フレームワーク」等の人権に関するガイドラインを参考に、人権侵害の規模、人権侵害が及ぼす範囲、救済可能性及び発生可能性について所管する部門の責任者を中心に行った評価に対して、人権に係る検討会と外部有識者を含め総合的に判断したうえでリスクマップを作成し、自社にとっての優先課題(顕著な人権課題)を特定しました。
人権に対する影響評価により特定した自社にとっての優先課題に対して、人権への負の影響を防止、軽減、是正するために以下を実行しています。
ライツホルダーにおける優先的な課題 | 負の影響の防止、軽減、是正策 |
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サプライヤーにおける強制労働、児童労働、若年労働者の権利、過重労働・長時間労働、安全かつ健康的な作業条件を享受する権利、住居及び移転の自由、教育を受ける権利、労働の自由・雇用保障 |
サプライヤーにおける強制労働等の負の影響を防止、軽減、是正するために、RSPO、FSC認証品の調達、主要企業のSedex加入、「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」セルフチェックを促進します。また、「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」に関する覚書に「ライオン人権方針」、「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」を追加し、サプライヤーにおいても人権方針が支持・尊重するように求めます。 |
コミュニティにおける水資源へのアクセス、地域住民の生活に及ぼす影響、環境マネジメント |
サプライヤー周辺の近隣住民を含めたコミュニティにおける水資源へのアクセス等の負の影響を防止、軽減、是正するために、サプライヤーセルフチェックの環境マネジメントに関する質問事項を追加し、コミュニティに対する具体的な取り組み状況を把握します。また、低評価のサプライヤーに対しては追加のヒアリングを行う等是正を働きかけます。 |
ビジネスパートナーにおける過重労働・長時間労働、ハラスメント |
ビジネスパートナーにおける過重労働・長時間労働等の負の影響を防止、軽減、是正するために、自社従業員に対してe-ラーニングや研修を通して「ライオン企業行動憲章」「ライオン人権方針」の浸透・定着を図っています。また、自社ホームページ等を通して開示している「ライオン人権方針」や「AL心のホットライン」を適宜ビジネスパートナーに周知しています。 |
消費者・生活者におけるプライバシーの権利 |
消費者・生活者のプライバシーの権利として個人情報の漏洩リスクを防止、軽減するために、「個人情報保護法」に準拠した「個人情報管理規程」及び「情報取扱に関する基本方針」「情報管理規程」「情報セキュリティ規程」等の方針・規程類を整備し、個人情報保護と情報セキュリティの徹底を図っています。 |
それぞれの負の影響の防止、軽減、是正策に対して質的または量的な指標を設定し、人権に係る検討会が定期的に所管部門の責任者に進捗をモニタリングするとともに、施策の実効性を追跡評価します。
人権の取り組み状況等については、随時自社ホームページ等で開示します。
当社グループでは、「ライオン企業行動憲章」「ライオン人権方針」の浸透と定着を図るため毎年国内の全従業員(パート社員を含む)を対象にe-ラーニングを通した研修を行っています。
また、毎年国内全従業員(パート社員を含む)を対象に「コンプライアンス意識調査アンケート」を行い、人権を含むコンプライアンスに関する意識や業務における行動について定量的・定性的に把握するとともに、結果を部門毎にフィードバックすることで、従業員の意識向上やより良い環境づくりに繋げています。
2022年には、人権デューディリジェンスを推進するにあたり、取締役・監査役・執行役員、人権に係る所管部門の責任者等と外部専門家を含め、ビジネスと人権についての勉強会及び意見交換を行い、理解を深めました。
「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」のヒューマンライツ・デューデリジェンス分科会のワークショップ等、外部イニシアチブにも参画し、人権を取り巻く社会情勢の理解を図っています。「日本化粧品工業会」においては、「サステナビリティ指針」を策定し、2022年には当社の従業員が所属する「社会課題対策部会」にて人権尊重やジェンダー平等に関する会員向けセミナーを企画・開催する等、企業における人権を含めた社会の持続可能な発展への取り組み実現に積極的に働きかけています。
当社グループは、人権を含む企業倫理に反する問題に適切に対応するため、苦情処理メカニズムとして、社内外の通報制度「AL(オールライオン)心のホットライン」を設置しています。
本システムでは、通報者として取引先等の社外ステークホルダーも含んでおり、通報者、被通報者のプライバシーは保護され、調査内容の秘密の厳守が保証されます。また、すべての案件は匿名の通報等を除き、すべての通報者へフィードバックを行っています。
サステナビリティ重要課題について事業を展開する国や地域で配慮すべき事項を外部有識者と抽出した「サステナビリティ状況共有シート」を活用し、8つの海外グループ会社の責任者に事業活動で想定される人権課題のヒアリングを行い、防止、軽減、是正策や対応状況を把握するとともに、進捗をモニタリングしています。
海外グループ会社と取引のあるサプライヤーについては、人権・労働を含めた当社グループの調達方針に関わる事項について「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」セルフチェックを活用し、サプライヤーによる影響評価を実施しています。
当社グループは、「原材料の調達」「当社での活動」「消費者による使用」のそれぞれのバリューチェーン上で起こり得る潜在的な人権侵害リスクを低減する取り組みを以下の通り行っています。
バリューチェーン・ステークホルダー別 当社の人権侵害防止に対する取り組みの全体像
当社グループは、原料調達における人権侵害防止の取り組みとして、「調達基本方針」にて法令遵守、環境保全、人権尊重等サステナビリティに関する当社グループの姿勢を明確にし、お取引先と取り組みを進化させています。
また、当社グループの主要な植物原料であるパーム油において、持続可能な調達を推進することが重要であると認識し、取り組みを進めています。
予防・軽減策 | 目標・進捗(2022年) |
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第三者認証を受けた原材料の調達→RSPO、FSC認証品の調達 |
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サプライチェーン上で社会・環境問題が発生した際に、解決能力のあるサプライヤーとの取引推進→森林破壊ゼロを支持するサプライヤー |
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予防・軽減策 | 進捗(2022年) |
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サプライヤーのサステナビリティ活動に関する定期的なリスク評価の実施 | 当社を含む国内グループ会社及びライオンコリア、青島ライオン、サザンライオンのサプライヤーに対して、「ライオングループ サプライヤーCSRガイドライン」に基づくセルフチェックを実施 |
Sedexでのリスク把握は18社 | |
高リスクサプライヤーの特定 | 「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」に基づくセルフチェックにおいて、高リスクサプライヤーの基準を設定 |
高リスクサプライヤーに対する監査の実施と改善計画の策定 | 高リスクサプライヤーなし |
*2023年3月末時点
当社グループは、お客様に製品を安心・安全にご使用いただくための取り組みとして、製品開発の各段階での業務プロセスや品質保証を定めた規程である「製品マネジメントシステム」を整備しています。また、医薬品医療機器等法、景品表示法、健康増進法等の関連法規遵守はもちろんのこと、「表示作成マニュアル」を定め、お客様の視点を考慮し誤解や不快感を起こさない、正確で節度ある広告・宣伝を行っています。
マレーシアやインドネシア等多くのイスラム教徒が住む国や地域においては、イスラム教徒の人々が安心して製品を使用できるようにハラール認証*の取得に取り組んでいます。
*ハラール認証の基準をクリアし、ハラールであると認められた製品等にマークを付与する制度。販売の際は、各国のハラール認証機関から正式に承認を受けた認証団体が発行したハラール認証書が必要