化学物質は、生活を便利で快適にする上で欠かせないものですが、適切な管理を怠ったり事故が起きた場合、人々の健康や生態系に大きな影響を与えるおそれがあります。ライオングループでは、関連法規の遵守はもちろん、独自の基準に基づき、製品の開発から使用・廃棄までの各段階で、化学物質の安全管理を推進しています。
当社グループは、「ライオン企業行動憲章」の精神に基づき「化学物質管理方針」を定めています。国際的化学物質管理の趨勢を踏まえた方針として、Global Framework on Chemicals*1(GFC)及び Strategic Approach to International Chemicals Management*2(SAICM)の考え方に沿い、化学物質のライフサイクル全体にわたる健全な管理と、環境と人間の健康への著しい悪影響を最小限に抑え、コミュニケーションの推進に努めることを定めています。GFCは、化学物質や廃棄物による有害な影響のない世界の実現を目指し、国際的な化学物質管理を強化するために2023年に採択された新たな国際枠組みです。化学物質のライフサイクル全体を対象とし、環境と人の健康を保護するための5つの戦略目的と28のターゲットを掲げ、各国政府、産業界、市民社会など多様な主体が協働して持続可能な化学物質管理を進めることを特徴としています。
*1 化学物質に関するグローバル枠組み(SAICM後継として2023年採択)
*2 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(2006年~2020年)
当社は、化学物質管理の取り組みに関して、担当役員を委員長、副委員長とし、研究部門、生産物流部門、海外事業部門、本社スタッフ部門等から構成される化学物質管理委員会を2023年に設置し、当社グループの化学物質管理方針に沿った活動を推進しています。
当社は、製品開発、生産、輸送、使用・廃棄の各段階において化学物質管理を徹底しています。
当社の化学物質管理
製品に使用する化学物質の種類と量は、製品開発の段階で選定を行い、性能の追求だけではなく安全性と環境への影響にも配慮しています。
当社は化審法に基づき、製造・輸入量が年間1トン以上などの規定に従って、すべての一般化学物質、優先評価化学物質について、用途分類とともに製造・輸入量を届出ています。今後も製造・輸入量、用途情報等を把握し、適正な届出を継続します。
*1 化審法「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の略称
韓国ライオンにおいて予備的登録手続きである「事前申告」および本登録を実施しています。
*2 化評法:化学物質の登録および評価に関する法律
今後ますます化学物質の適切な管理および強化が求められるなか、当社は、化管法*1、揮発性有機化合物(VOC)規制および水質汚濁防止法に基づく適正な届出と排出量管理、ならびに安衛法に基づく製造時の安全確保を、継続的に強化していくことを目標としています。
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)とは、有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する仕組みです。
当社のPRTR制度対象物質総排出量は2020年以降、2~9tで推移しています。
*1
化管法
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」の略称
当社は窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ばいじん、揮発性有機化合物(VOC)等、大気汚染につながる化学物質の排出削減に取り組んでいます。大気汚染防止法により、物質の種類ごと、排出施設の種類・規模ごとに排出基準が決められ、さらに地方自治体の条例による規制があります。当社は法令や条例を遵守するだけではなく、より厳しい市町村との個別協定の締結や自主基準の設定を各事業所で行い、汚染の予防に努めています。さらに生産工程の効率化、脱窒・脱硫等の環境対応設備の稼動等を実施し、排出量の削減に取り組んでいます。
COD*2は、水質汚濁防止法に基づき全国一律排水基準として許容限度(160mg/L(日間平均 120mg/L))が定められています。また、公共下水道へ排出する場合には下水道法による規制もありますが、当社はこれらの法規制を遵守しています。さらに、各地方自治体と当社事業所間で一律排水基準を上回る基準での協定を締結している場合もあります。当社はこれらを遵守し、さらに排水処理設備の安定化や定期的な保全、処理方法の改善を通じてCODの低減に努めるなど、より高い水準での排水管理を推進しています。
*2 COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量):水の汚れを表す指標のひとつで、水中の有機物を酸化して分解するために消費される酸素量。
当社が使用している全原料について、原料供給メーカーからSDSを入手・整備するとともに、データベース化して活用を図っています。また、事業者に商品を提供しているライオンハイジーン株式会社では、現場労働者がより安全に作業できるようにSDSを作成してお取引先に配布し、GHS*4に基づいて製品表示しています。
*3
SDS
Safety Data Sheetの略。化学物質による事故を未然に防ぐ目的で、化学製品の環境に対する影響や安全性、取り扱い方法等を記載したもの。
*4
GHS
Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals(化学品の分類と表示に関する世界調和システム)の略。国連で採択された、化学物質の危険性や有害性を分類する世界共通のルールに基づいた表示。
ライオングループ「化学物質管理方針」に基づき、労働安全を確保することを目的に、当社内で取扱っている原料・生産品に対してSDSデータベースより、事業所内でのGHS表示の徹底と化学物質取扱教育の実施と適切な保護具着用の推進を図っています。
原料や中間製品等を輸送する場合は、万一の事故に備えて、運送者や輸送品に対し「イエローカード*」や「容器イエローカード*」を配布・添付して、緊急処置方法等の情報を提供しています。
*
イエローカード、容器イエローカード
輸送中に化学物質の漏洩等が発生した場合に備え、その物質の性質や緊急処置方法等を記載した、黄色の緊急連絡カード。前者は運送者が常時携行するもの、後者は化学物質を入れた容器につけるもの。多くの化学工業会社で決めた自主基準をもとに作成している。
洗剤等に含まれる界面活性剤は使用された後、環境中に排出されます。当社は、日本石鹸洗剤工業会が実施している東京および大阪近郊の河川水域中の4種類の界面活性剤の濃度調査〜生態系リスク評価(年2回実施)に参加し、生態系への影響が小さいことを確認しています。
当社は化学物質の適正使用を強化するために、「化学物質情報管理システム」を国内関係会社も含めた研究開発部門と購買部門に2018年1月より順次導入し、原料及び製品含有化学物質の管理に取り組んでいます。
本システムは、「原料、製品組成に関するデータ」「法令情報データ」のデータベースと「製品組成開発支援機能」で構成されています。導入により、全事業分野での自社製品開発において、使用する化学物質に関する法令遵守体制を強化するとともに、蓄積される組成データから上市後の製品に含まれる化学物質を即時検索することが可能となりました。これにより情報管理レベル向上とトレーサビリティの確保、コンプライアンス対応力の強化を実現していきます。
NPEは2021年にEU REACH*1によりEU域内での使用が制限されました。さらに、日本では2025年4月より化審法*2の第二種特定化学物質に指定されました。当社では既にNPEの使用を廃止し、より環境負荷の低い物質への代替を完了しています。
*1 REACH(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals):EUにおける化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規制
*2 化審法:「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の略称
当社は、日本化学工業協会に参画し、化学物質の開発から廃棄までのすべてのライフサイクルにわたり、環境・安全面の継続的な改善を図っています。
当社は、化学物質の安全性や、その評価法に関する研究を助成する日本化学工業協会主催のLRI活動(日化協LRI)の趣旨に賛同し、2011年より当該事業に出資しています。
当社は日本化学工業協会レスポンシブル・ケア委員会の会員企業として、地域対話を積極的に行っています。各工場はそれぞれの地域の特性に合った対話の場を設け、地域関係者とのコミュニケーションを図っています。
2024年2月に新型コロナウイルスの規制緩和を受け、「第14回レスポンシブル・ケア 堺・泉北地区地域対話」を、町内会、自治連合協議会、行政等の関係者にご参加いただき、4年ぶりに対面開催の形式で実施しました。当日は環境管理責任者より当社及び大阪工場の環境への取り組みを報告しました。また、アンケート等で皆様に頂戴したご意見については、今後の取り組みの継続改善に反映していきます。
また、2025年1月には「第15回レスポンシブル・ケア 千葉地区地域対話」を、町内会、自治連合協議会、行政等関係者に参加頂き6年ぶりとなる対面の形式で実施しました。当社の千葉工場は、企画段階から会議に参加し協力しました。集会の発表資料や加盟各社の活動内容を閲覧できる2次元バーコード等を記載した冊子を配布し、同封のアンケートで皆様のご意見を集めました。いただいたご意見は今後の活動に活かします。
さらに、水環境保全と地域貢献に向けた取り組みに対して、千葉工場が2017年5月に第11回日本化学工業協会RC(レスポンシブル・ケア)優秀賞を受賞しました。日本化学工業協会RC(レスポンシブル・ケア)は、化学物質を取り扱う事業者が、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費、廃棄、リサイクルの全過程において「環境・安全・健康」を確保するとともに、活動の成果を公表し、社会との対話・コミュニケーションを行う自主的な管理活動です。千葉工場は操業開始以来、水リスクに備えた水環境保全活動を継続実施しています。工水の浄化による使用水の製造、工程排水リサイクル、法令基準より厳しい排水管理等を推進し、水使用量と排水量の削減、及び水質保全の成果に繋げています。また、地域の子どもたちや見学者等に対し、水の大切さの啓発も行っている点が高く評価されました。