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習慣化とは永遠のテーマ。
社長 掬川が語る、無意識の思考

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日々の生活のなかに溶け込む「習慣」。それは、毎朝の何気ないルーティンや、仕事を始める前の儀式のようなものから、健康維持のための日課だったり……人によってさまざまです。

こうした習慣を持つこと、何かを長く続けることは、私たちの人生をどのように変え、豊かなものにしてくれるのでしょうか? また、こうした一人ひとりの習慣が広がっていくことで、社会にどんな変化がもたらされるのでしょうか?

この度、130年以上にわたって人々の生活に寄り添ってきたライオンが新たにスタートした「LION Scope」。創刊記事として、社長の掬川正純に「習慣」をテーマに話を聞きました。

40年間続ける「朝風呂」と50年来の趣味「鉱物採集」

ライオンにとって最大かつ永遠のテーマである「習慣」。社長としての視点から語ってもらう前に、まずは掬川さん自身の毎日の習慣について聞いてみました。2022年初夏某日の13時——取材当日もいつもの一日と同じ、いくつかのルーティンを終えてから出勤したそう。

「まずは40年間続けている朝風呂ですね。毎日必ず早起きして、お湯に浸かります。熱い湯に浸かると、全身がバッチリ目覚める感覚があります。温度設定を高くして、たまに妻に怒られますけど(笑)。朝から体を隅々まで綺麗にして、しっかりお湯に浸かる。そうするとリフレッシュできて、フルスペックで仕事に入れる感覚があるんです。ちなみに、湯船のなかで歯をみがくこともあります」

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掬川正純(ライオン株式会社 代表取締役 社長執行役員)

1896(明治29)年に「獅子印ライオン歯磨」を発売した創業期から、歯みがきの啓発活動を続けてきたライオン。その一員として、やはり歯みがきにも、こだわりがあると言います。

「歯みがきは1日3回で、フロスもほぼ毎回使っています。ハブラシは自社のものを中心に、国内外のメーカーの新製品を使うことが多く、コレと決めているわけではありません。ただ、ハミガキの『味』については好みがあって、ミントが強めの辛い系を選ぶことが多いです」

お風呂を出たあとは、筋肉がやわらかくなった状態で、スクワットを33回。2019年に社長になってから運動不足になってしまったことをきっかけに、3年間ほぼ毎日続けていると言います。33回という、若干キリが悪い数字が気になりますが……。

「それが、ちょうど無理なく続けられる回数なんです。最初は30回から始めて徐々に増やしていく予定でしたが、プラス3回でめげました。でも、そこで無理をすると続かない。習慣化させるためには、苦痛に感じないラインを見極めることも大切だと思います」

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本社ビルの1階にて。天井高もあり解放感のある空間

朝のルーティンのほか、長年続けてきた趣味に鉱物採集があります。コロナ禍のいまは難しいものの、多いときで年間30日くらい、鉱物を探しに各地の山へ出かけていたとか。

「鉱物採集は、中学時代から数えて50年間来の趣味です。北海道から奄美大島、対馬まで、全国津々浦々の山をめぐってきました。何百万年以上もの年月の先にできあがった美しい結晶が、自分の手で石を割った瞬間に初めてあらわになる。その最初の目撃者が紛れもなく自分だと思うと、感動しませんか?」

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左から、ザクロ石、閃亜鉛鉱、スコレス沸石(撮影:掬川正純)

人間は継続が苦手な生きもの。だからこそ習慣化が重要

趣味も含め、さまざまな習慣を持っている掬川さん。そもそも習慣を持つこと、何かを長く続けることは、人生にどんな価値をもたらしてくれるのでしょうか? 普段はなかなか考えない「習慣」について聞いてみました。

「何事も、長期にわたって継続的に行なって初めて実現できることがあると思っています。人の健康維持はその最たるものですよね。思い立って1日や2日だけ運動をしたり、節制をしたりしても大きな効果を得ることはできませんから」

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「習慣」の可能性について聞いた瞬間、さらに前のめりになった気がした

例えば、会社に向かう通勤電車のなかで、その日の仕事のことを考える——無意識のうちに、そんなことを習慣にしている人も少なくないかもしれません。着いたらまずはあれをしよう、これをしよう、といった段取りや、考えが整理できていなかった問題に思考を巡らせてみたり。

「そんな毎朝の習慣のなかで、新しいアイデアが浮かぶこともある。その習慣は、当日の仕事に影響を与えることはもちろん、日々の積み重ねによって人生をもつくります。いまの私たちがあるのは、これまでに身につけてきた習慣のおかげでしょう。良い習慣は必ず良い未来につながるはずです」

「人は決めたことを継続的に実践することが苦手な生き物です。もちろん私も含めて。だからこそ、『習慣化』が重要なのだと思います。『習慣化』とはつまり、『意志の力を働かせなくても、自然に体が動く状態をつくりだす』ことです」

習慣化のポイントは、達成感や気持ち良さなどの「報酬」

習慣化とは『意志の力を働かせなくても、自然に体が動く状態をつくりだす』ことである——。それならば、うまく習慣化するための「秘訣」がわかれば、より良い未来に一歩近づける気がします。そのヒントとして、掬川さんは脳科学における「報酬」という概念を例に挙げました。

「『報酬』——つまり、『それをすると、良い体験が得られる』と感じられるかどうか。例えば、日本でビールを飲むという習慣がなぜこれほど広く根づいているのかと考えると、面白いと思いませんか? きっと、単なる味の良し悪し以上に、ビールを飲むことで大人の世界に入れるような、そういうある種の強い気持ち良さが『報酬』として得られることがポイントなんだろうと思います。私の勝手な想像ですけれども」

「この『報酬』という考え方は、歯みがきにも応用できるでしょう。直接的に得られる口のなかの爽快感や気持ち良さはもちろん、子どもがお母さん、お父さんと一緒に歯みがきをしているときに楽しいと感じたり、親子のつながりを実感できたりするのもそう。こうした『報酬』によって、最初は面倒だったとしても、いつしか自然と体が動き、やがて無意識の状態に入って習慣化していくのかもしれません」

掬川さんも、「食後に行なう洗いものをとことんやる」という自身の習慣が、「報酬」によって培われたような気がしていると言います。ポイントとなったのは、研究者として過ごしてきた期間に感じた、ほんの小さな達成感でした。

「皿やグラスを徹底的に洗うという私の習慣は、やりきった満足感や、そのグラスで飲むビールの美味しさが『報酬』となって、いつのまにか当たり前に続けられるようになったのではないかと思います」

「私は研究者だった当時から、実験に使ったビーカーを入念に洗うことが習慣なんですよ。洗い終えたグラスに水を吹きかけたとき、水滴にならずにスーーっと流れ落ちていく状態になるまで、完璧にやり切る。そうした小さな達成感を積み重ねることも、習慣化の大事なポイントかもしれません」

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本社ビル屋外にて

一人ひとりの習慣には、社会を変えるほどのインパクトがある

毎日少しずつ積もり積もって、人生にやがて大きな影響を与える「習慣」。さらには、こうした一人ひとりの習慣が積み重なることで、社会にも変化をもたらすのではないでしょうか。

「一人ひとりが健康的な習慣を身につけることは、第一にはその人自身のため。けれど、その習慣が広がっていって多くの人の健康状態が改善すれば、増え続ける医療費も抑えることができるはず。つまり、個々の習慣が社会に大きな意義をもたらすことになります」

「これは、オーラルケアの習慣も同様です。口腔内を良好に保つことは、脳卒中や心臓病、糖尿病などのリスクを下げるといわれています。つまり、一人ひとりのオーラルケアは回り回って社会全体のベネフィットになる。大げさに聞こえるかもしれませんが、それくらい私は習慣の力を信じています」

習慣にはこんなふうに、社会を変えてしまうほどのインパクトがある。それを信じて、ライオンは「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパス(存在意義)を掲げています。

「より良い習慣」を社会に根づかせてゆくためには、一人ひとりの習慣が自分自身の生活だけでなく、「社会をどう変えていくか」をより多くの人々に知ってもらうことも重要です。

「何か一つの習慣を取り入れることで、個々の健康状態がどれくらい良くなって、社会にどんな効果をもたらすのか、私たちのような企業がわかりやすくインフォメーションすることは大事だと思います」

「それは健康のことに限らず、環境問題などもそうですね。ライオンではハブラシリサイクル活動なども推進しています。『ハブラシ・リサイクルプログラム』に登録・参加いただければ、回収量に応じてポイント(慈善団体への寄付や商品と交換できるテラサイクルポイント)が付与されます。今後はポイントという直接的な『報酬』だけでなく、この行動がいかに地球環境の改善につながっているのか具体的にお伝えし、実感していただくことも重要なのだろうと思います」

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2023年春にライオンは本社ビルを川向いの蔵前に移転する。工事中の本社の様子を見つめる

「習慣をつくること」に対して、誰よりもうまくなりたい

インタビューの最後に、あらためて掬川さんに聞きました。「習慣」とはズバリ何なのか——。掬川さんは少し考えて、やがて口を開くと笑顔で答えました。

「これまでいろいろと申し上げてきましたが、結局のところ『まだよくわかっていない』というのが正直な答えです」

「もちろん、私たちは四六時中といって良いくらい習慣について考えています。それでもまだわからない。つまり、それくらい難しいものだととらえています。しかしだからこそ、会社を挙げて追究する価値があるテーマだと思います。習慣を科学し、多くの人に共有していく。これはライオンの命題として、考え続けていかなくてはいけません」

「頭でわかっていても体が動かない」という状態を、いかに克服するか。掬川さんは、これを「脳との戦い」と表現しました。

「さまざまな角度から脳にアプローチし、いかに無意識の行動にまで持っていくか。このメカニズムを解き明かすことは、私たちにとって最大かつ永遠のテーマであろうと思います」

「そして、もしライオンが『習慣をつくること』に対して誰よりもうまくなれたら、とてつもない競争力になると思うんです。さらには、その競争力を正しく使って社会を大きく変えていくことができるようになる。夢みたいな話かもしれませんし、簡単ではないことはわかっていますが、こんなにも挑戦しがいのあるテーマって、なかなかないんじゃないかと思いますよ」

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ランチ後にも欠かさず歯みがき

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