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研究知見とデータサイエンスの融合による歯磨剤開発

歯磨剤は、湿潤剤、清掃剤、発泡剤、薬用成分、粘度調整剤など、複数の成分で構成されています。生活者ニーズに寄り添った品質の高い歯磨剤を開発するために、実験データや研究員の知見に基づき、各種成分の量や組み合わせを検討し、数多くの実験を繰り返すことで、目標を満たす組成へと絞り込んでいきます。新規成分の配合や新たな品質項目の設定を伴うような開発の場合、検討の初期段階では実験データが不足しているため、さらなる検討期間が必要となります。そこで、限られた既知の実験データを起点に組成探索が可能な機械学習手法の一つである「ベイズ最適化」に、研究員の知見を効果的に取り入れることで、より少ない実験回数で複数の目標を満たすことが出来る新たな実験計画手法を独自に確立しました(図1)。

図1.ベイズ最適化を用いた組成開発のイメージ

本手法を適用し、歯磨剤の固さと滑らかさの物性指標である粘度と弾性率の最適組成を探索しました。その結果、従来の組成開発では100回以上のサンプル作製も珍しくない中、16回の作製で目標を満たす組成を導き出すことができ、本手法に伴う追加工程を含めても想定の約半分の期間での組成開発を実現しました。検討の過程では、6回目の実験以降、実験を重ねるに従い予測値と実測値の乖離が小さくなる傾向が確認でき(図2)、効率的に最適組成の絞り込みが行えていることがわかります。現在は、歯磨剤だけでなく、様々な製品の組成開発にも本手法を活用しています。

図2.本手法による歯磨剤組成の探索過程

既知の10データを用いて、本手法により最適組成を導出し、所定の方法で歯磨剤を試作。試作したサンプルについて粘度と弾性率を測定し、既知データを加え、再度最適組成を導出、再実験を行う一連のプロセスにおいて得られた予測値と実測値を図示。

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https://doc.lion.co.jp/uploads/tmg_block_page_image/file/8896/20230613_01.pdf

研究事例紹介

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